三菱重工パワーインダストリー POWER of Solution

interview

地球の裏側の人々とも心を通わすことができた―ボイラ技術・燃焼設計課 課長 髙嶋洋平インタビュー

2022/10/26

三菱重工パワーインダストリーにはさまざまな角度からお客様に関わるスペシャリスト達がいます。お客様の期待を超える働きをして満足して頂く。その強い意志を胸に日々奮闘するメンバー達へ、仕事にかける想いについてインタビューするシリーズ企画。第二回は発電設備の心臓であるボイラの設計を行うボイラ技術・燃焼設計課 課長 髙嶋洋平氏。印象深いお客様とのやり取り、ボイラ設計に対する想い、脱炭素の未来社会へ向けて等の話が聞けました。

ボイラに関する深い知識そして客観的な視点のバランスが要

――お仕事内容について教えてください。

髙嶋:ボイラの性能設計と燃焼装置の設計をしています。ボイラは燃料から熱の形でエネルギーを取り出して、その熱で高温・高圧の蒸気を発生させ、使いやすい形のエネルギーに変換する装置(化学エネルギーを熱エネルギーへの変換)です。そのため、どのような燃料からどのように熱を取り出すか、効率よくエネルギーを変換してゆくかを考えて、それを実現させる装置の仕様を決定します。ボイラはボイラプラントの主機であると同時に、発生した熱を利用するプラントの中の一つの装置でもあります。そのためボイラに関する深い知識とともに、プラント全体のバランスを見極める客観的かつ幅広い視野が大切です。

――お客様の要望に合わせて一からすべて設計するのでしょうか?

髙嶋:そうですね。どういう燃料をインプットしてどんなアウトプットを出したいか、プラントをどのように運転させたいのか、という条件をヒアリングさせていただいて、その条件に合うボイラを一から設計します。しかし全くのゼロから、ということはほとんどありません。三菱重工グループは多くのプラントを設計してきた歴史や経験、多くの技術があります。「これはあのボイラのあそこに似ているな」と思ったら、過去の設計を調べて、その際に得た知見がここにも使える、ということが数多くあります。そのためボイラやプラントに関する多面的で深い知識は不可欠です。そして設計を進める中で問題があれば先頭に立ってお客様とやり取りをしながら解決していきます。

言葉の通じない地球の裏側の人々とも技術を通じて心を通わすことができる

――印象に残っているお客様とのエピソードなどありますか?

髙嶋:これは私がこの会社に異動して来る前、三菱重工の横浜製作所勤務時に経験したことですが、10年ほど前に南米のチリに石炭の発電プラントを建設していました。1号機から始まり、何年もかけて4号機の建設が終盤に差し掛かった頃、お客様へ引き渡し済の3号機のトラブルが発生してしまいました。原因調査を依頼され、チームで2週~3週間の滞在のつもりで向かいました。ところが、いろいろな要因から4号機でも燃焼設備のトラブルが続いてしまって結局3ヵ月間滞在したことがあります。はじめはチームの一員として入りましたが、私以外の設計メンバーは役目を終えて帰国し現場の設計責任者として私一人が残ることになりました。現場のお客様が使われるスペイン語はほとんど分かりませんでしたが、それでもなんとか現地の皆さんとコミュニケーションを取りながら解決へと奮闘しました。

――それは大変でしたね…スペイン語がほとんど話せない状態で、英語は通じるのでしょうか?

髙嶋:現場の方には片言のスペイン語と絵、数字で説明しました。トップの方への説明は英語の資料を作成し、英語で説明を行いました。それも大変でした(笑) 一人頑張る私を見て、現地の皆さんも心配してくださって。食事に誘ってくれたりして、すごくいい関係を築くことができ、結果、素晴らしいプラントを納めることができました。最後は私のことを「マイスター」なんて呼んでくださって(笑) 地球の裏側の、言葉もほとんど通じないない人たちとも心を通わせることができたという経験は本当にかけがえのないことでした。この経験は三菱重工パワーインダストリーに異動してきてからの今の私の仕事に対する姿勢にも繋がっています。どんなプロジェクトでも相手があってのこと。どんなことがあってもプロジェクト完遂時にはお客様と信頼を結ぶことができるのだ、と確信させてくれました。

抽象的な要望に対しチーム一丸となって完遂へと導く

――お客様にとってどんな存在でありたいですか?

髙嶋:お客様の全てがボイラのプロとは限りませんから「こうしたいのだけど、こんなことができないか、これを解決できないか」等と抽象的なご希望だったり、お困りごとなどを相談頂きます。それをお客様の立場になって、最適なカタチの具体案として分かりやすく提案できる存在でありたいです。提案に対してもしっかりと説明し納得していただいて最終的には「やりたいことができて良かった!」と感じていただきたい。そして納めて終わりではありません。実際に何年か運転してみないと分からないことも多いのです。ですからアフターサービスでも「もっとこうしたい、改善したい」等のご要望にもお応えしていきたいです。そうやってお互いが満足するwin-winの関係になることに最高の充実感を覚えます。

――お客様とそういった関係を築くために心がけていることはありますか?

髙嶋:設計の我々だけでお客様といい関係が築けるわけではありません。営業やサービス、建設、調達、品証、試運転などすべての部署の仲間たちと良好なコミュニケーションを取ることでプロジェクト全体がスムーズに進むのだと思います。また、ボイラの設計がブレると周りの全員が困ることになります。ですから技術の向上や知識を深めてブレない設計を貫けるようにしたいと思っています。もちろん俯瞰的な視野も忘れずに。バランスが大切です。プロジェクトが完遂すると社内のメンバーとも心が一つになるんですよね。そうやって仲間が増えていく。そうすると、また別のプロジェクトで問題が発生した時にその仲間が助けてくれるのです。いい循環が生れると思います。

安心して暮らせる社会を目指し次の技術を開発、実装して広めたい

――どんな社会を目指して業務にあたっていますか?

髙嶋:私たちが取り扱っている製品は社会を支える重要なインフラです。それを安心安全に稼働させるということは家族やひとびとの暮らしを守ることに直結していると思います。安心して暮らせる社会を目指すためには、我々が納める製品の安定稼働が第一です。また、ボイラは燃料を燃焼させてエネルギーのカタチを変えるシステムなので、燃料を燃やす際にどうしても環境へ影響があります。そのため、CO2やNOxなどの環境への影響をできるだけ低減することを目指し、さらにはカーボンネガティブにすることが理想です。そんな設計ができる設計者になるために日々勉強を重ね、次の技術開発を行い、社会への実装を進めていきたいと思っています。ただし、技術を開発しただけでは駄目で、良い技術であればそれを広める努力をしなければいけない。広めるためには分かりやすく表現しなくてはいけないし、費用だってできるだけかからない方がいい。考えることもやらなければいけないことも山のようにあります。忙しいです(笑) でも、暮らしを守る、やりがいのある素晴らしい仕事だと思います。

プロフィール

ボイラ技術部 ボイラ技術・燃焼設計課 課長 髙嶋 洋平(たかしま ようへい) 関内勤務

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