2023-01-30
ごみ焼却炉で投入されるごみの熱量が変動し、主燃焼室域の温度が高温となったときに焼却飛灰の一部が軟化、溶融して、バインダーとなることで、周囲の灰を巻き込んで炉内に付着してクリンカが生成されます。炉内温度がより高温となる場合に、軟化、溶融する灰も多くなり、より大きく硬質なクリンカが生成され易い状況となります。クリンカは熱の回収を阻害しボイラの効率を低下させるだけでなく、成長したクリンカの落下でボイラの健全性や炉内の安全性が低下する恐れがあります。
図 主燃焼室推スプレー噴霧位置と効果
既設流動床式焼却炉では、硬質クリンカの生成抑制と主燃焼室温度を適正範囲に管理することは困難でしたが、三菱重工パワーインダストリーでは、従来の投入ごみ質の均一化、給じん安定化及び炉床温度の制御に加えて、図に示すように主燃焼室に水スプレーを付加することで二次燃焼室の温度を確保しながら、硬質クリンカ生成温度域以下での運転が可能になりました。この結果、クリンカ落下が原因となる計画外停止を撲滅し、安定稼働の信頼性と炉内清掃時の作業性が向上しました。今後も施設の安定稼働に取り組んで参ります。
2017年に実施した更新工事において、改良された内容をご紹介します。地域で排出されるごみの量は、環境意識の向上や地域人口の増減等によって変化します。建設当初の計画よりごみ処理量が減ったごみ発電設備において、運用する焼却炉を3炉から2炉に削減すると共に、新たな蒸気条件に合わせた高効率のタービンに替えることで、図に示すように発電量の向上と二酸化炭素排出量の大幅な低減(削減率29.2%)を実現しました。
図 蒸気タービン更新前後の発電、受電及び消費電力量の変化
新規タービン据付完了後写真
最後に、2021年に三菱重工パワーインダストリーが発行している技術を紹介する冊子で取り上げた、長期運用に対応するボイラ設備の特長をご紹介します。
三菱重工パワーインダストリーは、1989年より国内外に20缶以上のごみ焼却炉用廃熱ボイラを納入しており、お客様に定評をいただいています。当設備は、今後も長期間の運用に対応できるよう図に示しておりますように以下を考慮して設計製作されています。
図 廃熱ボイラ構成図
三菱重工パワーインダストリーでは、プラント全体のフレームワークとしてSDGsに取組み、地域を含む広範なステークホルダーとの信頼関係を強化して参ります。