三菱重工パワーインダストリー POWER of Solution

中核設備のホームドクターとして良い関係を

2023/2/21

三菱重工パワーインダストリー株式会社発行の“いんだすとりー”2021年1月号に寄稿された新東海製紙株式会社 島田工場 顧問(前副工場長)浅見明彦様 の記事をご紹介します。産業用火力発電の回収ボイラのリニューアル工事を行い定期的な補修計画を行う中で、突発事故の発生や大規模発見補修工事をすることなく、設置以降33年間安定稼働を行っているという新東海製紙株式会社様の取り組みをご覧ください。

明治28年南アルプスの山林を購入したのが始まり

新東海製紙株式会社 島田工場は、静岡県中部、越すに越されぬ大井川の左岸に位置しています。 江戸時代大井川に橋が作られなかった為、弊社すぐ横に当時を偲ぶ島田宿跡や川越関所跡がそのままの形で残っています。

島田工場は、明治28年創業者大倉喜八郎男爵が南アルプスの山林約2万5千ヘクタールを購入したことから始まります。大倉男爵が、貿易、建設、ホテル等数多く起業した一つに、明治40年(1907年)南アルプスの森林資源と大井川の水力発電を活用した東海紙料株式会社(当社前身)があります。この時購入した山林は現在も社有林として、二酸化炭素の固定、静岡県の水資源の源として大切に保全されています。

1951年、東海パルプと社名変更し、クラフトパルプ、Kライナー、クラフト紙の生産を始めました。製紙業界の再編が加速する中、2007年特種製紙株式会社と経営統合、2010年に特種東海株式会社誕生、2016年日本製紙との販売機能統合と島田工場の分社化により現在の新東海製紙株式会社が誕生しました。

木質チップを主燃料とするバイオマスボイラ

本工場は46万m²の敷地に製紙設備、パルプ設備、ボイラ・発電設備、用排水処理設備等があり、年間60万トンを超える産業用紙を中心とした紙を生産しています。 紙の生産には大量の蒸気・電気・水が必要です。近年、本工場では環境負荷低減のため、重油ボイラを停止し、1基の回収ボイラと3基の木質チップを主燃料とするバイオマスボイラでエネルギーをまかなっています。メインボイラは1987年稼働の回収ボイラ(R1B: 1,115t/d 三菱重工横浜製作所製)です

紙の製造は木から繊維(パルプ)を取り出すことから始まります。木質チップにナトリウム系薬品を加え、高温・高圧で煮る(蒸解)事で、接着剤役のリグニンを溶出します。溶出液は有機物を含み、外観が黒い事より「黒液」と呼ばれます。製紙工場では黒液を燃焼させ発電と紙を乾燥させる蒸気を作ります。また、発生したスメルト(灰)は全量回収し再利用されます。このことから黒液燃焼ボイラは「回収ボイラ」と呼ばれ、パルプ生産を行う工場特有の設備です。

新東海製紙株式会社様ご提供

“腐食との戦い”にリニューアル工事で対処

黒液の燃焼は極めて腐食性が高く、回収ボイラの保守は「腐食との戦い」と言っても過言ではありません。弊社では三菱パワーインダストリー(現在の三菱重工パワーインダストリー)様と共に、この難題に「リニューアル工事」と称する取組で対処してきました。 これは、「突発停止防止」「ボイラ寿命の延命」「体系的な修理計画(実施項目・時期・金額)の策定」を目的に実施しています。

年2度の定期点検に合わせ、腐食の激しい配管の計画的な補修工事を実施します。同時に耐圧部の計画的な肉厚測定等も実施します。得られた劣化度合いの継続的・定量的な評価を基に、三菱重工パワーインダストリー様と次年度以降の補修計画を立案~実施します。その結果、突発事故の発生や定検時の大規模発見補修工事をすることなく、設置以降33年間に亘り安定操業し続けることが出来ました。このリニューアル工事は三菱重工パワーインダストリー様のご協カで成り立っています。 来年度、R1Bの節炭器更新という大規模改修工事を計画しています。

節炭器はボイラ最後段に配置された熱交換器で、上下方向22.5mと非常に長く、本数も直管2280本と巨大なものです。直管部全数更新工事の為、ある程度長期間の停止を覚悟していましたが、当初の計画案はとても受入難いものでした。度重なる打合せの中、「地組エ法」等工期短縮の幾つもの提案がなされ、在庫のやりくりでなんとか可能となる日数まで短縮できました。

ホームドクター三菱重工パワーインダストリーに寄せる期待

2021年春先から工事が始まります。三菱重工パワーインダストリー様には夜間作業を含め極めて厳しい安全・品質・工程面での管理をお願いすることとなります。弊社関係者も万全な準備のもと、目標達成に向けて取り組む所存です。コミュニケーション良く円滑な現場運営と、いつも通りの安全第一で、高い品質での工事完了を期待しています。

工場の中核をなすR1Bのホームドクターである三菱重工パワーインダストリー様には、今後も様々な環境の変化にも変わらず弊社に寄り添い、保守・安定運転に寄与頂けることを期待しています。

寄稿:新東海製紙株式会社 島田工場 顧問(前副工場長)浅見明彦様

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