三菱重工パワーインダストリー POWER of Solution

流動層ボイラーを用いたバイオマス発電設備の特長とその有用性

2023/3/2

世界における脱炭素化の動きに合わせ、日本においても2022年COP27において2050年迄にカーボンフリーを目指す政策が発表されました。この脱炭素化に合わせ日本国内でも化石燃料に変わり、太陽光、太陽熱、風力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーの導入、利用が進んでいます。今回は、再生可能エネルギーの一つである木質系バイオマスに焦点をあて、その他の再生可能エネルギーに対する優位性と三菱重工パワーインダストリーが木質系バイオマス発電用として納入している流動層ボイラーを用いたバイオマス発電設備の特長とその有用性についてご紹介します。

日本における再生可能エネルギーの利用

再生可能エネルギー固定価格買取制度

再生可能エネルギーによる発電は化石燃料を用いた電力に対しコストが高く、日本での導入は大型水力発電、小規模地熱発電を除けば、比較的限定された範囲にとどまっていました。しかし、カーボンフリー政策のもとに再生可能エネルギーを利用して発電した電力を一定期間、在来エネルギーよりも有利な価格で買い取る「再生可能エネルギー固定価格買取制度」(FIT制度)が2012年に開始され、これを受けて日本国内でも導入が進んでいます。

木質系バイオマス発電の優位性

FIT制度導入以降、日本国内における再生可能エネルギー利用が推進されてきましたが、以下の理由から木質系バイオマス発電に注目が集まっています。

(1) 森林資源の有効活用

森林大国である日本は、戦後の国策事業もあり植林事業を推進してきました。しかしながら、安価な輸入材におされその利用が少なくなると共に林業が衰退。手入れのされない放置された森林が日本国内に増加する結果となりました。これに加えて地球温暖化による気象変化が影響し、集中豪雨による土砂崩れや河川への倒木流入による水害を引き起こす結果となっています。
この森林資源を有効活用し森林再生(伐採した後の再植林を実施)する事でカーボンフリーが達成できる点が注目されています。

(2) 地域活性化

日本の森林資源を多く抱える地域は過疎化が進んでいます。さらに地域に労働場所を確保できない地域では、過疎化に拍車がかかっています。
これらの地域に木質バイオマス発電所を建設する事で、林業再生、燃料製造、発電事業に関係する雇用を確保でき、地域振興に役立つと期待を集めています。

(3) 余熱利用によるCO₂削減

農業ハウスや魚介類養殖場等では、栽培・養殖するものによっては化石燃料を利用して室内温度や水温度を管理、運営しています。一方、農業では山間地に比較的近い地域で実施されているケースが多く、近年養殖業においても山間部の休校校舎跡等が村おこしとして利用されているケースが増加しています。
これらの施設に木質バイオマス発電設備で発生する余熱を有効活用する事により、農業・水産業のコスト低減と共にCO₂削減が達成できると注目されています。

以上の注目される点を考慮して、三菱重工パワーインダストリーでは標準化した製品ラインナップだけではなく、お客様のニーズに沿った設計・製作・プラント運用サポート等を実施しています。

流動層ボイラーを用いた木質系バイオマス発電設備

FIT制度を活用した木質系バイオマス発電事業を経済性の面から評価する場合、事業期間中の総売電売上げが、資本費(設備投資費用)、燃料代、運転維持費と3項目の合計を上回り、どの程度の収益を見込むことができるかを検証しなければいけません。三菱重工パワーインダストリーでは、木質系バイオマス発電事業が成立しやすくなるように下記を実現するための発電設備の設計・製作を行っています。

  • (1) 標準化による設備費用低減
  • (2) 多様な燃料への対応と省燃料化
  • (3) 燃え残り減容化

標準化による設備費用低減

2022年度及び2023年度とFIT制度も大きく様変わりする事になります。(図1、表1を参照下さい。) 三菱重工パワーインダストリーでは、FIT制度当初からの顧客ニーズに合わせ、クラス毎の標準化を実施しています。

図1 2023年度FIT制度による木質及びその他バイオマス発電での買取価格 (経産省HPより)
表1 FIT制度活用のための「地域活用要件」について (資源エネルギー庁作成)

これらの4種類の設備について、ボイラー、タービン、発電機、補機類を組み合わせた図2に示すような発電設備パッケージとしてボイラー構造、補機類、設備配置をそれぞれ標準化しました。

図2 バイオマス発電設備の例

(1) 2MW クラス

未利用材由来の木質バイオマス燃料を使用する際に、最も売電単価が有利となる容量です。年間木質燃料収集可能量が27,000~30,000t/年を目安とするプラントになります。

(2) 7MW クラス

発電所を中心とした半径30~50km圏内で必要な木質燃料(間伐材、未利用材、一般材等)を収集可能な場合、もっとも事業性が確保しやすい発電容量となります。年間木質収集可能量が75,000~90,000t/年を目安とするプラントです。

(3) 10MWクラス

国内材と輸入材を利用するプラントです。FITからFIPに移行する際、10MW未満が入札対象からはずれた事により、標準化を実現した製品です。

(4) 20MW クラス

輸入材を主燃料とする設備です。大量の燃料が必要となるため、木質ペレットやPKS(Palm Kernel Shell:パームヤシ殻)等の農業残渣が主燃料となり、複数の燃料を同時に利用するプラントです。設置場所はこれら燃料を輸入する港湾地域に設置される特徴があります。

(5) 50MWクラス

輸入材を主燃料とする発電設備です。20MWクラス同様、燃料ハンドリングを考慮して、港湾地域に設置される特徴があります。

上記のような標準型式以外にも、今後のFIT要求に合わせた余熱利用を考慮したもの、顧客要求に合わせた発電設備等にも対応可能です。また、発電だけではなく、余熱利用も考慮したトータルエネルギーバランスを最適化し、CO₂削減に貢献できる設備を提供いたします。

多様な燃料への対応

バイオマスを燃料として使用する場合、化石燃料(石炭、石油、ガス)と比較して、状態や形状、そして発熱量や水分といった燃料性状の変動が大きくなります。また、集積時に土や釘といった不燃物が混入する場合もあります。図3にバイオマスの外観と性状の例を示します。

図3 バイオマスの外観と性状の例

流動層ボイラーの仕組み

流動媒体である砂の層に空気を適度な流速で吹き込むと、砂が液体のような挙動を示します。流動層を加熱し、この中にバイオマスを投入して600~800℃の温度で燃焼させるのが流動層燃焼です。投入された固形燃料は流動層内で比較的短時間に燃焼を完結できます。また、燃焼温度が低いため、発生するNOx が低いという特徴があります。さらに、不燃物は流動化した砂の中を自重で沈むので炉底から取り出すことが可能です。

木質系バイオマス発電設備の普及にむけて

三菱重工パワーインダストリーは木質系バイオマス発電設備の普及にむけて今まで重要視されていた「発電効率」だけでなく、「エネルギー利用率」「CO₂発生量低減、抑制」を重視した設備提案を実施いたします。
併せて、地域活性化をサポートする事で、SGDsにも貢献できる設備を提案して参ります。

出典:
経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220325006/20220325006.html
資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/community/dl/20220316_fit.pdf
『MHPS-IDS技報VOL.2』より

参考文献 :
再生可能エネルギー固定価格買取制度ガイドブック(2017)/経済産業省 資源エネルギー庁 編
再生可能エネルギー固定価格買取制度ガイドブック 2022年度版/経済産業省 資源エネルギー庁

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