2,000kWクラス地熱発電設備の標準機設計
再生可能エネルギーに分類される地熱発電ですが、日本の地下資源の埋蔵量はアメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位で、安定して発電が可能な純国産の再生可能エネルギーということもあり、近年注目されています。そこで今回は三菱重工パワーインダストリーの2,000kWクラス地熱発電設備の標準設計をご紹介します。
再生可能エネルギー 地熱発電とは
地熱発電は再生可能エネルギーに分類される発電方式であり以下のような特徴を有しています。
- 地下資源の活用により、燃料費がかからない
- 発電においてCO2をほとんど発生しない
- 高稼働率で運転が可能である
主要国における地熱資源量及び地熱発電設備容量(出典:平成29年6月 資源エネルギー庁「地熱資源開発の現状について」)について以下にご紹介します。
昨今、日本国内において地熱発電のニーズが高まってきていますが、中でも固定価格買取制度適用における売電単価は40円/kWh であり、環境アセスメントの申請が不要、かつ高圧での送電系統接続が可能である2,000kWクラスの地熱発電設備の需要は年々高まっています。こちらでは2,000kWクラスの地熱発電設備の標準設計をご紹介します。
地熱発電の特徴
地下資源の有効活用
地熱発電は、地中に浸透しマグマ溜の熱により熱せられた雨水をフラッシュ(減圧)する事で得られる蒸気を利用して発電します。そのため地域毎で蒸気圧力・温度、蒸気流量、不凝縮ガス濃度が異なるため、発電所の最適設計が都度必要となります。
気象条件への適合
建設予定地は山中であるため、地熱凝縮水を冷却塔で冷却し、冷却水として使用します。そのため、冷却水温度は気象条件(湿球温度)に依存します。この冷却水を利用して、直接接触式復水器で蒸気タービンの排気を凝縮します。
不凝縮ガスへの対処
地熱蒸気には、数%の不凝縮ガスが含まれます。効率的に出力を維持するには復水器器内圧を維持することが重要で、この不凝縮ガスは影響を及ぼします。このため、不凝縮ガスを系外へ排出するガス抽出装置を設置して対処します。
景観への配慮
以下が代表的な地熱発電設備の系統図です。
地熱資源は国立・国定公園内に多数存在しています。そのため、自然公園法の関係からコンパクトな配置、景観を損なわない色彩、そして高さを13m に抑えた配置計画が要求されます。
地熱発電の標準設計
設計条件と機器の仕様
実例をもとに設定した2,000kWクラス地熱発電設備の標準設計条件は以下のとおりです。
この各条件をもとに、ヒートバランスをはじめとした基本設計を行います。
その検討結果を基に設計費、材料費、工事費用を考慮し、プラント設備の仕様を決定することになります。
機器配置図
以下に2,000kWクラス地熱発電設備の標準配置図を示します。地熱発電設備は敷地制限のある山中に建設されることが多いため、電気制御室、タービン室、復水器の離隔距離と復水器と冷却塔の離隔距離を最小にする事で必要敷地面積を極力低減した最適な配置としています。
工程短縮
工事工程の短縮を図るため、電気制御室は工場で一体化させ現地輸送とし、また、蒸気タービンはブロック化する事で、現地作業量を低減することができます。
国内小型地熱発電の標準化に向けて
以上2,000kWクラス地熱発電設備の標準設計を紹介しましたが、三菱重工パワーインダストリーでは今後の更なる増加が見込まれる国内小型地熱発電に対し、標準化による低コスト化を進め地熱発電の普及に取り組んで参ります。
出典:『三菱重工パワーインダストリー 技報Vol.6』より
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