三菱重工パワーインダストリー POWER of Solution

【水素発電】低炭素化・脱炭素化を可能に!水素焚きバーナー技術の実用化へ

2022/11/25

2022年2月、水素ガスを低コストの設備投資で高効率に安定利用できる産業用ボイラ向け水素焚きバーナー燃焼技術の開発および実用化に目途をつけました。これは2020年度に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「水素社会構築技術開発事業(大規模水素エネルギー利用技術開発)」を通じ成果を得たものです。

日本の高度経済成長を支えた産業用ボイラ

産業用ボイラはものづくり企業の工場で多くの生産設備を稼働させるために必要な電力・蒸気・熱等の膨大なエネルギーを生み出す重要な心臓部です。1960年代からの高度経済成長時代に日本の重化学工業の工場稼働用に導入され、日本経済発展の礎となりました。しかし多くは化石燃料を用いて稼働しているため、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、低炭素化・脱炭素化を踏まえた設備更新が必須となっています。

産官学連携で水素燃焼技術について研究開発

三菱重工パワーインダストリーは製鉄所や化学工場から排出される水素が含まれるガスをボイラで利用することで電力や蒸気として有効活用する技術を有していますが、低コストで経済的に既存のボイラ設備を水素ガスを用いて脱炭素化する技術の開発・実用化に目途をつけました。これはNEDOの助成事業である「水素社会構築技術開発事業」に参画し、帝京大学と協力して開発に取り組むことで水素燃焼技術の高度化に成功したこと、さらに横浜国立大学と水素の基礎燃焼試験の共同研究を行い水素燃焼の本質に迫る取り組みを進めたことによる、産官学連携の開発体制をとった結果です。

【水素発電】世界でも類をみないNOx低減レベルを実現

水素は、ボイラ向けのガス燃料として従来主流のLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)に比べて体積当たりのエネルギーが小さく、コンパクトで経済的な設備でボイラに必要な熱量を供給するには、高圧による大量供給が不可欠です。また水素は燃焼温度がLNGやLPGと比較して高いため燃焼空気中のN2(窒素)の酸化反応が進みやすく、NOx(窒素酸化物)が多く発生する特徴を有しているため、低NOx化の工夫が必要です。

今回、三菱重工グループ独自の低NOxガスバーナー技術をベースとして、水素の燃焼メカニズムを分析して最適化。これにより従来の最大供給圧力100kPaに対して900kPaまでの高い供給圧力での安定燃焼を達成し、水素の弱点(体積当たりのエネルギーが小さいこと)の克服に成功しました。この技術開発に成功したことで、水素ガス燃焼設備を大幅にコンパクト化することができ、ボイラへ経済的に導入し運用頂くことができるようになりました。さらに、同一バーナーで0.1kPaから900kPaの広範囲(ターンダウン比:約1/100(※1))にわたる圧力範囲の水素でも、安定した火炎を形成し安全に運転できることを実証しました。
また水素の高圧化によりNOx発生を抑制できることを見出し、さらに二段燃焼方式等の採用で、LPG燃焼と比べて大幅なNOx低減が可能となり、目標としていた東京都の規制値である60ppm(※2)以下を達成。さらに10ppm以下へと大幅に低減できることも実証しています。このNOx低減レベルは、世界でも類を見ないものです。

※1…ターンダウン比とは、バーナー(燃焼器)における燃焼負荷の可変範囲のことで、安定な燃焼が可能な最小の燃焼負荷に対する最大の燃焼負荷の比で表したものです。
※2…標準酸素濃度5%の設備の場合。

水素専焼時の燃焼状況(水素供給圧力:900kPaG、バーナー型式:センターファイアリング型)

2050年カーボンニュートラル社会実現へ向けて私たちができること

工場の低炭素化、脱炭素化を目的に既存ボイラでの水素燃料利用のニーズが高まっています。三菱重工パワーインダストリーでは安全かつ低コストに低NOxを実現し、水素を利用する技術を確立し、ボイラ排ガス中のCO2排出量の低減またはゼロエミッション化することを目標に技術開発を推進しています。水素は燃焼の過程でCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。持続可能な循環型社会の実現に向け、私たちは日々挑戦し続けます。

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