蒸気タービンとは?仕組みや構造をわかりやすく解説(前編)
発電プラントを工場内にお持ちの皆様も改めて「蒸気タービンの仕組みとは?」と尋ねられたら、すぐに答えるのは難しいのではないでしょうか。そこで前編・後編に分けて蒸気タービンの仕組みや原理、構造等を図と共にわかりやすくご紹介します。 前編では蒸気タービンの原理から分類までを取り上げます。
蒸気タービンとは
蒸気タービンとは蒸気が持つ熱エネルギーを回転運動のエネルギーへと変えて機械的仕事へと変換する装置のことです。ボイラーで燃料を燃やし、その熱で水を蒸気にします。そしてボイラーで発生した、この蒸気でタービンを回転させ、発電機から電気を得ます。
ボイラーで作られた蒸気をタービンで徐々に膨張しながら熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに換えて発電機出力として取り出します。タービンで仕事を終えた蒸気は低温・低圧の排気として復水器へと出ていき水となります。
蒸気タービンの特徴とは?
蒸気タービンの特徴を分かりやすくご紹介します。
特徴1:大出力が得られる
大量の蒸気を使用することで出力が増加し、複数の蒸気タービンを組み合わせることで一つの発電プラントで約100万人が生活できるほどの電力を得ることも可能です。
特徴2:多様な燃料が使用可能
蒸気を発生する熱源なら何でも使用することができます。例えば以下のようなものがそれにあたります。
・化石燃料(石炭、石油、天然ガス等)
・原子力(ウラン、プルトニウム)
・バイオマス(木くず、黒液、生ごみ等)
・排熱(GTの排気ガス、工場)
・地熱
・太陽熱
特徴3:振動が小さく静か
往復運動をする部品がなく、回転運動のみなので振動が小さく静かです。
蒸気タービンの作動原理とは
蒸気タービンは高温高圧蒸気のエネルギーを運動エネルギーに換えて、それを機械的仕事に変換します。まず、固定羽根(静翼・ノズル)は高圧蒸気を低圧側へ噴出膨張させて高速の蒸気流を作ります。そしてこの蒸気流を回転羽根(動翼・ブレード)に当てることで回転させ機械的仕事に変換しています。
衝動タービンと反動タービン
蒸気タービンには衝動タービンと反動タービンとの2種類があります。
衝動タービン
ノズル部分のみで蒸気を膨張させノズルからの高速蒸気流の方向を回転羽根内で変えて、回転力をつくります。動翼内では蒸気は膨張しません。水車や風車は衝動式です。翼断面が比較的大型・幅広となり、1段落当たりの熱落差が大きく取れます。
反動タービン
動翼内でも蒸気を膨張させ、衝動力と同時に回転羽根内での蒸気速度の増加による反動力も利用して、回転力をつくります。翼断面は比較的小型・幅を狭くする事ができ衝動式に比べて1段落当たりの熱落差が小さいのが特徴です。
蒸気タービンの内部蒸気の流れ
ノズルから流出する蒸気とブレードの速度関係は以下のようになっています。
・ノズルから蒸気が速度C1で流出、ブレードが速度uで回転しているとすると相対速度W1で蒸気がブレードに流入します。
・ブレードで蒸気方向が変わりW2で流出します。
・ブレードが速度uで回転しているため絶対速度C2で蒸気が流出し、(K1 -K2)にブレード速度uを掛けたものがブレードに付加される仕事量となります。
高温・高圧の蒸気ほど大きな仕事量を得られますが、効率的に仕事量に変換するために何段かに分けて徐々に圧力を低下させていくようにしています。入口蒸気の条件が高いほど、段数は多くなります。
蒸気タービンの形式
蒸気タービンは用途により大きく2つに分類することができます。
電気を売るために発電する事業用発電設備
電力会社および電力小売業等の発電専用設備として使用します。発電出力が大きく100万kW程度が主流です。電気消費量の変動に合わせて負荷変動があります。機器によっては発停回数が多く、万が一の場合に備えて予備機も所有しています。
極限まで熱エネルギーを利用するため、大容量の電力が得られる復水タービンを使用します。
工場で蒸気を使用する際にその蒸気を使用して発電する産業用発電設備
製紙会社、繊維会社、化学会社、石油会社等では工場で蒸気を使用しますが、その際に発電もして、工場内へ電力を供給する方法です。これにより電気代が節約でき、万が一停電が起きても工場は運用できます。発電出力は工場によってまちまちで、出力は最大でも5万kW程度です。工場での蒸気使用量によって出力が変動します。工場は年間を通して止まることがないので発電設備も定期点検以外は極力止めません。
電力+蒸気の送気が要求される場合に使われる背圧タービンを使用します。排気の熱エネルギーが、工場で有効利用されるため、プラント効率が非常に高いのが特徴です。
抽気・混気タービン
途中から蒸気を抜く、または入れる場合は抽気・混気タービンを使用します。中間段から蒸気を抽気するタービンを「抽気タービン」、工場内の余剰蒸気等を混入させて発電するタービンを「混気タービン」といいます。
直結・減速タービン
発電機との結合方式により、直結タービンと減速タービンがあります。
直結タービンはタービンロータと発電機ロータが直接連結されるタービンです。タービンと発電機の回転数は同じ(3000rpm or 3600rpm)です。許容伝達軸トルク(伝えられる力)が大きいため、高出力タービンにも使用できます。
減速タービンはタービンロータと発電機ロータが減速機を介して繋がるタービンです。タービンの回転数は発電機の回転数とは異なります。タービンを高速回転することで小型化できますが、減速機の許容伝達軸トルクに限界があり40MW以下となります。
排気方向による分類
タービンは排気の方向でも区別され、上向き排気(背圧Tのみ)、軸流排気、下向き排気の3つに分類されます。これより排気が流れ込む復水器や、発電機の設置位置が決まります。
(後編に続く)
発電プラントで重要な役割を担う蒸気タービンについて解説いたしました。三菱重工パワーインダストリーでは産業用火力発電から中小規模バイオマス発電、地熱発電等、幅広い発電所の建設を担っております。建設後はプラントのホームドクターとして二人三脚で伴走し続けます。運用やメンテナンスでお困りの際にはぜひお気軽にお問合せください。