三菱重工パワーインダストリー POWER of Solution

蒸気タービンとは?仕組みや構造をわかりやすく解説(後編)

2024/9/26

発電プラントを工場内にお持ちの皆様も改めて「蒸気タービンの仕組みとは?」と尋ねられたら、すぐに答えるのは難しいのではないでしょうか。そこで前編・後編に分けて蒸気タービンの仕組みや原理、構造等を図と共にわかりやすくご紹介します。 後編では、蒸気タービンの構造から技術的な難しさまでを取り上げます。

蒸気タービンの構造:車室・排気室

上半車室 下半車室 排気室

用途

車室および排気室はロータ等の主要部品を収め、タービン本体に流入する蒸気を保持する役目を担っています。

構造

容易に分解点検が出来るように上下二つ割れ構造になっており、上下合わせ面はガスケットを挟むことなく機密を保つようになっています。車室と排気室はボルトナットで接続され、通常は分解しません。一般的に車室は鋳鋼製、排気室は鋼板製となっています。

蒸気タービンの構造:ロータ

ロータ

用途

ロータは蒸気の熱エネルギーを回転力に変換する回転子です。一体の鍛造鋼から削り出し円板に翼が植込まれます。

構造

ブレードを植え込めるように翼溝(サイドエントリ、Tルート)が加工されています。高温で過大な遠心力や蒸気力が加わるため、特殊な高強度材を使用しています。

翼植え込み前のロータ
翼植え込み前のロータ

蒸気タービンの構造:ブレード

ブレード

用途

ブレードはノズルからの蒸気流を受けてロータに回転力を与える役割です。

構造

ロータに加工された翼溝とブレードの翼根を嵌め合う構造です。高温で過大な遠心力や蒸気力、振動応力が加わるため、特殊な高強度材を使用しています。さらに信頼性の高い強度検討を行っています。

サイドエントリ型 Tルート型

翼根形状の違いにより、サイドエントリ型とTルート型があります。

蒸気タービンの構造:仕切り版&ノズル

用途

ノズルは通路内で蒸気を膨張させて蒸気のもつ熱エネルギーを速度エネルギーに変換すると共に、流れの向きを変えて回転方向の運動量をつくりだします。ノズルは仕切板に固定されており、仕切板と一体になっています。

構造

仕切板は二つ割れ構造になっており、外輪・内輪の半円リングとノズルから構成されています。

組立式ノズル ユニット式ノズル シュラウドバンド式ノズル 溶接式ノズル

組み立て式ノズル、ユニット式ノズル、シュラウバンド式ノズル、溶接式ノズルの4つの種類があります。

蒸気タービンの構造:グランド部

ロータ 漏洩蒸気 シール蒸気 板ばね ラビリンスパッキン

用途

ラビリンスパッキンを設置して、蒸気の漏洩を極力減らす役割です。

構造

ラビリンスパッキンは板ばねによって保持されていて、板ばねのスプリングアクションにより万が一ロータが接触してもパッキンが逃げてロータの過熱をできるだけ抑える構造です。

漏洩蒸気 シール蒸気

ラビリンスパッキン

蒸気グランド部に設置されているのがラビリンスパッキンです。仕切板にも設置されています。蒸気の漏洩を少なくするため、隙間は0.3~0.5mm程度とし、なるべく多くの段を設けています。

蒸気タービンの構造:主蒸気止弁

主蒸気止弁

用途

ボイラー等から流入する蒸気を遮る弁です。通常運転時には弁は全開で異常運転時に急閉しタービンへの蒸気流入を遮断します。

構造

タービンに異常が発生した時に、蒸気流入を遮断する重要な装置です。定期的な作動確認や分解点検が必要です。

蒸気タービンの構造:主蒸気加減弁

サーボモータ 蒸気加減弁 抽気加減弁

用途

ガバナの指令信号により、タービンへの流入蒸気量を制御するための弁です。

構造

運転制御のための重要な弁であり、動きがスムーズであるかを確認しておく必要があります。

蒸気タービンの構造:抽気加減弁

サーボモータ 蒸気加減弁 抽気加減弁

用途

ガバナの指令信号により、抽気圧を制御し、抽気量を調整するための弁です。

蒸気タービンの構造:軸受

ジャーナル軸受 スラスト軸受

用途

タービンロータの回転により発生する油膜作用で荷重を支えます。

蒸気タービンの構造:ジャーナル軸受

ジャーナル軸受

用途

タービンロータの自重等、ロータの半径方向荷重を支持する軸です。

蒸気タービンの構造:スラスト軸受

スラスト軸受

用途

タービンロータの軸方向にかかる荷重を支持する軸受です。

構造

蒸気タービンの構造:減速機

用途

歯車で動力(タービン)の回転速度を減少させて出力する機械装置です。

構造

蒸気タービンの難しさ

蒸気タービンが他の機械と比較して難しい点が4つあります。

1、圧力容器ですが、形が複雑です。そして各部の圧力・温度が運転状態によって変わってきます。

2、回転部分との隙間がありますが、蒸気漏れを最小にするために隙間を可能な限り小さくしています。約0.5mm程度です。

3、重量物(ロータ:10Ton以上あり)を高速で回転させるため高度なバランシング技術が必要です。

4.年間連続運転で止まることがありません。

 産業用火力発電もバイオマス発電も三菱重工パワーインダストリーへ

発電プラントで重要な役割を担う蒸気タービンについて解説いたしました。三菱重工パワーインダストリーでは産業用火力発電から中小規模バイオマス発電、地熱発電等、幅広い発電所の建設を担っております。建設後はプラントのホームドクターとして二人三脚で伴走し続けます。運用やメンテナンスでお困りの際にはぜひお気軽にお問合せください

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