産業界で広く使用されているボイラの蒸発管では、炭素鋼管の水素侵食による劣化が問題として知られている。ボイラ蒸発管で水素侵食が発生すると広範囲にわたって管の強度が極端に低下するため補修復旧には長期間を要することとなり、場合によっては工場の生産性が低下し、多大な経済的損失につながる。これまで補給水からの不純物の混入を防止しボイラ給水を塩基性に保つ等の未然防止のための基本的対策はなされてきた。しかし、現在も予期せぬ急激なボイラ水の水質悪化をきっかけとした蒸発管の水素侵食がしばしば発生しており、ボイラの運用条件と損傷程度の関係や、水質悪化の場合の水素侵食が発生しやすい位置等、予測のできない部分も多く、水素侵食の予測と対策は十分にできていないのが実情である。
本研究ではボイラ実機の水素侵食事例2件を詳細に調査・研究した結果、水質悪化時の管内面の被膜の特性がその後の侵食の進展に影響すること、また、蒸発管内部の特定の沸騰状態・流動状態が管内面の腐食を促進し、水素侵食位置の分布に影響を及ぼすことを明らかにした。さらに、石油精製・石油化学の高温高圧装置等で汎用的に使われている高温水素損傷:HTHA(High-temperature hydrogen attack)の進展速度評価手法をボイラ蒸発管へ適用することを試み、ボイラ水の水質悪化からボイラ蒸発管で水素侵食が発生するまでの時間を簡便に予測できる実用的な手法を開発した。
本研究で得られた知見は、ボイラ蒸発管の水素侵食の進行リスク回避のための指針策定に寄与するものであり、詳細な内容を2023年度の千葉大学大学院工学研究科の博士論文(工学)として公開済である。ここではその概要を紹介する。
技報 Vol.8 [2023] お客様とともにカーボンニュートラルを実現
ボイラ蒸発管の水素侵食に関する損傷の選択性と損傷条件に関する研究
表紙写真:出光興産株式会社殿納 出光徳山バイオマス発電所
1. はじめに
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