ウェビナーの中でいただいたご質問について回答を順次掲載しております。
皆さまの疑問解決の一助となりましたら幸いでございます。
【2024年12月12日開催ウェビナー】
産業用ボイラーを対象とした保守管理のための特殊検査
- 1 産業用ボイラーの技術開発動向
- 2 可能であれば燃料転換(石炭→天然ガス)した場合の特殊なものがあればご教示いただきたい。 また、昨年度は御社営業ご担当よりご多忙と伺ったが、弊社メンテナンスSVに行っているお客様より燃料転換の相談があったときに、御社を紹介して良いものか教えていただきたい。
- 3 管の腐食、減肉、亀裂進展等についてどの程度先まで予測できるのか?具体的には次回点検までに破裂しないか否かの判定はできるのか
- 4 特殊検査にはどのようなものがあるか知りたいです。
- 5 40ページ目の図でtsrを割って赤くなっている場所が本来なら減肉しにくい場所のような気がしますが、原因はなんだったのでしょうか。ガスの下流側中央部だったのでの質問です。
- 6 過熱器管等の狭隘で手が届きにくい深層部の付着金物(サポート)との溶接部について、経年による溶接割れや腐食について検査・確認する方法があればご教示願います。
- 7 溶射部分の測定は可能なのでしょうか?また異材接合管部分はどうなるのでしょうか?
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当方輸入材も使用しており、海外製の材料に関する情報があれば提供してほしい。
JIS規格とASME規格での違い(JIS相当材と運用に違いがあるのか、スケール剥離性など注意する材質が存在するのかなど) - 9 補修によって一部SUS材に置き換えしている管など探触検査可能なのでしょうか?
- 10 溶射管は全体含めての肉厚となると思われますが、管外観の3Dスキャンと組み合わせて、立体視するなども将来的に導入されるのでしょうか?
- 11 事例の中でアッシュカットによる減肉という部位があったと思うが、プロテクタを設置して流速が早くなり近傍の管が摩耗促進された事例でしょうか?ちなみにガス速度はどのくらいでしょうか?
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- 産業用ボイラーの技術開発動向
事業用の大型化石燃料焚きボイラーのCO2排出低減の影響もあり、当社では、水素バーナ燃焼技術、燃料転換(燃料転換(ガス焚き、木質チップ、ホワイトペレット・ブラックペレットなどのバイオマス燃料、水素、アンモニアなど)に取り組んでいます。また、バイオ燃料焚きボイラー設計等を進めています。
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可能であれば燃料転換(石炭→天然ガス)した場合の特殊なものがあればご教示いただきたい。
また、昨年度は御社営業ご担当よりご多忙と伺ったが、弊社メンテナンスSVに行っているお客様より燃料転換の相談があったときに、御社を紹介して良いものか教えていただきたい。
燃料転換による検査の増減または特殊検査の有無で言えば下記回答になります。
燃料がクリーンになる方向であり、それによる違う特殊検査はありません。
どちらかと言うと不要になる検査が多いが、燃料転換しても元々の燃料の残渣により腐食が進行すること、雨水腐食やクリープは燃料に問わず進行するため、計画的な検査メンテナンスが必要です。
また、燃料転換(石炭→天然ガス)時の一般的な設計配慮点としては、ガス焚きにより火炉出口温度が上昇することです。これに伴い、蒸気温度をコントロールする減温器スプレー弁の容量、コイルの伝熱面積、さらに各部のメタル温度等の検討が必要になります。個々のボイラーで、詳細検討が必要です。 他社設計のボイラーになりますと詳細設計データなく、燃料転換設計は難しいと考えます。 -
可能であれば燃料転換(石炭→天然ガス)した場合の特殊なものがあればご教示いただきたい。
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- 管の腐食、減肉、亀裂進展等についてどの程度先まで予測できるのか? 具体的には次回点検までに破裂しないか否かの判定はできるのか
ボイラーの一般的な腐食種類として内面腐食(水に起因した損傷)、外面腐食が有ります。
内面腐食では酸素腐食、アルカリ腐食、水素浸食など、外面腐食では硫酸腐食、雨水腐食などが有り、腐食と言えども様々な種類が有ります。
複合的に発生する場合も有り、一概に予想は難しいのが実状ですが、腐食・減肉は定期的に肉厚管理することにより予防保全管理が出来るのと、腐食要因である灰のサンプリング分析や管のサンプル抜管調査によって損傷要因を突き止めることにより、予測することも可能と考えます。 また、更新に際しては、延命対策を施すことも可能です。
き裂進展についても、発生メカニズムを把握することに予測可能と考えます。
しかしながら、一般的にき裂(割れ)が有った場合は応力集中が起こらないようにスムージングを実施したり、溶接部の移設や管取替、構造変更等の処置を施すことが一般的です。 以上のような対応により、次期定修までの漏洩対策や、その先の検査・更新などのメンテナンス方針策定まで対応可能です。 -
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- 特殊検査にはどのようなものがあるか知りたいです。
今回紹介した特殊検査以外に代表的な検査手法として以下のものが有ります。
- ・管内面ECT(インナーUTが不得手な管内面腐食減肉対応)
- ・MLAS法(脆性クリープ領域部のクリープ損傷評価)
- ・析出物粒間距離法(延性クリープ領域部クリープ損傷評価)
- ・微小電気抵抗(SER)法による溶射膜検査技術(溶射被膜の劣化判断)
- ・X線画像処理によるき裂検出技術(溝状腐食、腐食疲労を画像処理にて検出)
- ・ペンシルECT(前処理レスの表面き裂検出技術)
- ・RT代替UT(PA-UTによるRT代替)
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- 40ページ目の図でtsrを割って赤くなっている場所が本来なら減肉しにくい場所のような気がしますが、原因はなんだったのでしょうか。ガスの下流側中央部だったのでの質問です。
ガスの下流側ではありますが、S/Bに面しており、S/B噴霧蒸気に灰が巻き込まれて減肉するS/Bエロージョンと判断しています。
S/B廻りの最下段及び最上段管はプロテクタ施工しているが、上下2段目管より深層部はプロテクタ未設置でS/Bの影響でエロージョン減肉したと考えています。また、特に減肉が著しい管は若干の管列乱れがあったため、S/B蒸気の影響が大きく、減肉が加速したと推定しています。 -
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- 過熱器管等の狭隘で手が届きにくい深層部の付着金物(サポート)との溶接部について、経年による溶接割れや腐食について検査・確認する方法があればご教示願います。
横置き過熱器に関するご質問と理解して回答します。
検査は、ヘリカル水浸UTの適用が有効と考えます。但し、その場合は管寄せ近傍の管を切断・復旧する付帯作業が発生すると想定します。また、管形状によっては適用出来ない(空気だまりが管上部に発生、R150㎜以下の曲げ管の場合プローブが通過しない 等)場合もありますので、事前検討が必要です。
上記方法が不可の場合は、CCDカメラによる目視点検の方法がありますが、定量的ではなく、且つ、外表面スケール付着に影響され精度は落ちます。 -
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- 溶射部分の測定は可能なのでしょうか?また異材接合管部分はどうなるのでしょうか?
水浸UT法により測定する場合、溶射部の膜厚のみ測定することはできませんが、母材の厚さを含めて、トータル厚さとして測定、保守管理することは可能です。
溶射膜厚は、市販の膜厚計(電磁誘導式)で管外面から測定可能(従来手法)です。 異材接合管部分(異材溶接部)のUT検査ですが、溶接境界を含めた鋼側であればUT探傷は可能です。溶接部は柱状晶組織のため、超音波のSN比の低下、音響異方性、減衰の方向依存性等により割れの反射エコーを特定できず、割れの検出が困難です。 異材溶接部の割れ検出は、PT(浸透探傷試験)とRT(放射線透過試験)の併用が望ましいと考えます。 -
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当方輸入材も使用しており、海外製の材料に関する情報があれば提供してほしい。
JIS規格とASME規格での違い(JIS相当材と運用に違いがあるのか、スケール剥離性など注意する材質が存在するのかなど)
海外製材料に関する不適合事例等の情報は、当方では持ち合わせていません。JIS相当材でのスケール剥離等の特性違いについては、一般的にはSUS材の粒度が影響(粒度が小さいとスケール成長が遅く剥離しにくい)するため、海外製JIS相当材を選択される場合、粒度の配慮が必要と考えます。
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当方輸入材も使用しており、海外製の材料に関する情報があれば提供してほしい。
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- 補修によって一部SUS材に置き換えしている管など探触検査可能なのでしょうか?
ご質問のSUS材の探触検査可否ですが、肉厚測定は鋼材とSUS材の対比試験片で校正することで、計測は可能です。
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- 溶射管は全体含めての肉厚となると思われますが、管外観の3Dスキャンと組み合わせて、立体視するなども将来的に導入されるのでしょうか?
現状の3Dスキャンは厚さ測定をするのもではなく、管や物体を3Dスキャン計測して凹凸状況を確認するものです。
3Dスキャンを使用する場合は管表面に堆積物が残存した場合、残存物が凹凸表示に影響するため前処理(ブラストによるスケール除去や清掃)が必要となります。
その場合、溶射が剥離する可能性があることや、溶射上からのスキャン結果から溶射膜の残存は判断できないことから3D計測は得策ではありません。
3Dスキャンでは立体視が可能ですが、現状は肉厚測定データを盛り込んだデータ処理は考えておりません。 -
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- 事例の中でアッシュカットによる減肉という部位があったと思うが、プロテクタを設置して流速が早くなり近傍の管が摩耗促進された事例でしょうか?ちなみにガス速度はどのくらいでしょうか?
当該事例部のガス流速は約18m/secです。また、本事例はS/Bによるエロージョン減肉であり、ガス流速変化は関連性低いと判断しています。プロテクタの設置枚数を増やしたり、広範囲を覆う等の処置時は、ガス流速変化も考慮して決定する必要があると考えます。
※いただいたご質問の内、事業及び技術上の機微事項にあたるものについては、どのような質問があったかも含め、記載を差し控えておりますのでご理解賜りますようお願い申し上げます。
なお、具体的な事業構想・案件をお持ちの上でのご質問の場合には、お問い合わせフォームから個別にお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。