三菱重工パワーインダストリー POWER of Solution

interview

ボイラを“この子”と言ってしまうことも…ソリューショングループ 花田直哉インタビュー

2022/10/24

三菱重工パワーインダストリーにはさまざまな角度からお客様に関わるスペシャリスト達がいます。お客様の期待に応え、それ以上の働きをして満足して頂く。その強い意志を胸に日々奮闘するメンバー達へ、仕事にかける思いについてインタビューするシリーズ企画。第一回はボイラ事故時に真っ先に対応する部隊のグループ長 花田直哉氏。緊急時への対応、ボイラへの想い、お客様との絆について話が聞けました。

私たちはボイラのお医者さん

――お仕事内容について教えてください。

花田:産業用ボイラの事故時に初動対応としてお客様に寄り添い損傷や事故の原因究明調査を行い、対策を立案するという業務があります。
人間に例えると、具合が悪くて病院に行くと、お医者さんは患者さんの状態を見てどうすれば良くなるか考えますよね。手術すれば良いのか、
するにしてもどんな手術が必要なのか、そもそも手術をせずとも薬で治すことができるのかなど原因を究明し、どうすればいいか明確にして
現実に沿った対処法を患者さんへ伝えます。それをボイラに行っているのが私たちです。

――分かりやすいです。

花田:それから事故を未然に防ぐために定期メンテナンスを行って早めに悪いところを見つけるというのも私たちの役目です。ただし、ここが難しいところですがギリギリ許容数値の範囲内ならそのまま使いたい、というお客様が大半です。
例えば人間でも「血糖値が高いですよ」と言われても致命的じゃなければ具体的に対策しようとしないのと同じで、治療にはお金がかかるのでお客様としてはなるべくなら先延ばしにしたいと思われますよね。
そういう時はつい「この子が可哀想です」ってボイラを擬人化して表現してしまいます(笑)

――素敵ですね。親身になって考えて対応していることが伝わります。

花田:今しっかりと治療すれば元気にまだまだ動けるのです。ですから、お客様に納得していただけるためにホームドクターとして可能な限り理論的に説明するように心がけています。現場担当者が決裁権を持っていないことも多いので、担当者の方が決裁者の方へしっかりと説明ができるように資料作りも行います。我々の安全の数値基準は通常のものより厳しいのです。少しの数字の悪さも見逃さず無視しません。故にお客様としては通常の範囲内でおさまっているのだからいいだろう、と思ってしまうこともあるのでしょう。ただし、厳しいのには理由があり、我々メーカーしか持ちえない過去の経験から基づくものがほとんどです。それを見逃して取り返しのつかないことになってしまったら、損害を大きくしてしまう可能性があります。それを誠実に分かりやすく理解していただけるように伝える努力をしています。

来なくていいと言われてもかけつける!

――三菱重工パワーインダストリーが納入したすべてのボイラのケアを行うのでしょうか?

花田:すべてです。ただし定期点検は我々ではなく、他社に依頼されているケースもあります。ですが事故が起きた時には何かしら必ず対応します。
たまに事故が起きたけど自分たちでどうにかするから来なくていい、とおっしゃることもあります。そんな時でも「ちょっとおかしいぞ?」と感じた時は必ず行きます(笑)心配ですから。

――事故が起きた時に最初に現地に行き、お客様の対応をするのはプレッシャーもありますね。

花田:そうですね。どうしても人の都合をつけることができず、お待たせしてしまうこともありますが、夜中に連絡があって翌日の始発でかけつける…なんてこともあります。ですがやりがいがあります。事故が起きた時こそ、お客様と誠実なコミュニケーションを取ることで強い信頼関係が生まれると思っています。ある技術者から「ソリューショングループのメンバーは事故の最初から関わり最後まで経験できる羨ましい部署だ」と言われました。
その通りだと思います。部分的に関わるのではなく、自分たちで調査して対応を考え、健全な状態になるまで見届けることができる。これは本当に貴重な経験であり、なにものにも代えがたい財産になります。

原因解明するまで徹底的に調べつくす

――今まで経験された事故で印象に残っていることはありますか?

花田:あるお客様に事故が起きた時に、まずボイラの設計そのものが疑われたことがあります。すぐ現地に向かい調査を開始し夜中までずっと点検を行い、すべてをはっきりさせるまでやり続けました。まだ結論はでていなかったのですが、いつの間にか、お客様の疑いが晴れていました。真摯に調査し続けた姿勢が信頼できるものだと思っていただけたのだと感じ本当に嬉しかったです。

――態度でお客様の信頼を得たのですね。

花田:はい。調査をしている時は悩むことも多いです。その時に大先輩に「責任とか費用とかを考えてはダメだ。技術者がその様に悩んでは物事の解決も何もできない」と言われました。技術者は堂々と自信をもって技術を突き詰めるべきだということです。事故が起きたとしても100%ボイラのせいだ、ということはないのです。複合的にさまざまな要因が重なって、事故が起きてしまう。技術者が最高の設計をして建設したとしても実際に動かしてみないと何が起こるかは分からない。ですので、事故が起こった時は技術を信じて原因を究明し、お客様へ誠実にベストなソリューションを提案する。そこにお客様との信頼関係が生れるのだと信じています。

――日々未経験の事故が起きているのでしょうか?

花田:三菱重工グループには長い歴史があります。私が生まれる前から先人たちが経験し記録してきてくださった、さまざまな事故事例とその解決法という宝物があります。ですが最近の事故は結構経験したことの無いものが多いです。理由は、過去の経験から古い事故は未然防止できていることもあるかと思いますが、何十年も前に作られたボイラの事故は何十年経った今だからこそ、起こったものもあると思っています。現在、日本各地にあるボイラは昭和50年代に作られたものもまだ沢山残っています。そうすると、その年数をかけた結果の事故が発生する。
それは未だ経験したことのない事故となるわけです。しかし三菱重工グループの長い歴史の中で蓄積された経験と知見があれば、新しい事故であっても過去の事故を鑑みて複合的に調査、原因究明が行えます。それが私たちの最大の強みだと思います。

困った時にまっさきに声をかけられるホームドクターへ

――お客様にとって、どんな存在でありたいですか?

花田:私たちは“ソリューショングループ”です。その名の通り、私たちに相談すれば必ず解決してくれる、困った時は私たちに声をかけよう、そう思ってもらえる存在になりたいです。

――まさにホームドクターですね。

花田:そうですね。まず私たちに相談していただくことからスタートしますが大きな事故や不具合が見つかった時には治療にお金も時間もかかり、時には複数年かけることもあります。そうなればソリューショングループだけでなく営業や設計など、さまざまな部署と連携し、お客様へベストソリューションを提供できるように最大限努力します。そして完全に健康な状態にします。それが私たちの役目です。
健康な時も、そうでない時もお客様のボイラにずっと関わらせて頂きたい、そう思っています。最終的に三菱重工パワーインダストリーのファンになっていただけたら最高ですね。

プロフィール

サービス事業部 サービス推進部 ソリューショングループ グループ長 花田 直哉(はなだ なおや) 本牧勤務

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