三菱重工パワーインダストリー POWER of Solution

ロング水浸UTによる回収ボイラー炉底管の肉厚測定~三菱重工パワーインダストリー技報Vol.5より

2024/11/18

製紙工場では、パルプ製造時に発生する「黒液」という副産物を燃焼させて発電用蒸気とプロセス用蒸気を発生させ、燃焼により「黒液」から薬品を回収する役割を担う回収ボイラーという設備を有していますが、製紙工程に不可欠な設備であることから健全性の確認が非常に重要です。今回は三菱重工パワーインダストリー技報Vol.5(2020年発行)に掲載された回収ボイラー炉底管の肉厚測定技術についてご紹介します。

回収ボイラーメンテナンス:回収ボイラーの3つの課題

現在、回収用ボイラーには以下3つの課題があります。

1、多くの回収ボイラーはメンテナンスをしながら長年運用されている。

2、生産設備の合理化により予備のボイラーを設置しないケースが多いため、計画外停止が許されなくなっている。

3、定期点検の工程短縮が推進されている。 

このような状況から回収ボイラーの定期点検は重要ですが、なかでも火炉底部の健全性の確認が非常に大切です。しかしこの部位の検査は困難度が高く、従来の方法では時間とコストがかかっていました。そこで三菱重工パワーインダストリーでは天井、前壁、炉底まで一気通貫で連続肉厚測定ができる「ロング水浸UT装置」を開発し実際に稼働中の回収ボイラーに適用しました。

回収ボイラーメンテナンス:「ロング水浸UT装置」の装置構成と測定原理

図1 水浸UT測定器
図1 水浸UT測定器

図1は水浸UT測定器の外観です。水浸UT装置はプローブ、ケーブル、超音波探傷器及びケーブル引抜装置で構成されています。

図2 水浸UT測定原理
図2 水浸UT測定原理

図2のようにプロープに取り付けられた探触子をモータで高速回転させながら管の軸方向に移動させることにより、管内の全面的な肉厚測定を連続的に行うことができます。

回収ボイラーメンテナンス:「ロング水浸UT装置」の実機適用への課題

従来のケーブルの長さは35m程度ですが、今回の対象ボイラーの管の長さは60mにもなります。長いケーブルにすると信号とノイズの判別が困難になり、測定精度が低下する可能性があります。さらに長尺のケーブルをチューブ内部に挿入する際の挿入性も大切です。さらに水頭圧によるプローブ回転への影響も考慮しなくてはなりません。

回収ボイラーメンテナンス:「ロング水浸UT装置」の実機適用の結果

 

表1  ロング水浸UTの仕様と適用範囲
表1  ロング水浸UTの仕様と適用範囲

実際に80mのケーブルで測定を行ったところ、表1の通り肉厚2.6mmまでの判定が可能であることが確認されました。

このロング水浸UT装置によりコスト低減や従来見つけることが困難な箇所の減肉を顕在化させ定検工期を短縮することができます。

さらにこの技術は、「黒液」を燃料とする回収ボイラーだけでなく、他の燃料を使用するボイラーの長尺管の肉厚測定にも適用可能です。

ボイラーの健全性確認について課題をお持ちの皆様はぜひお問合せください。

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