流動層ボイラー点検におけるライフル管水浸UT装置の開発~三菱重工パワーインダストリー技報Vol.7より
流動層ボイラーは、化石燃料、木質バイオマス、製紙スラッジなど広範な燃料が燃焼可能ですが、炉内温度の制御のために設置する層内伝熱管が摩耗、噴破すると重大な事故につながるので、肉厚の正確な測定が求められますが、設置されるライフル管の肉厚測定はその形状から多大な労力とコストが課題でした。これらの課題を解決し、効率よく高い精度で測定する装置として、三菱重工パワーインダストリー技報Vol.7(2022年発行)に掲載されたライフル管水浸UT装置の開発についてご紹介します。
流動層ボイラー点検:検査技術の課題
流動層ボイラーで広く使われるライフル管は内部のリブによる山・谷部があり、その影響で、従来の水浸UT検査では正確な肉厚測定が難しいという問題がありました。そこで三菱重工パワーインダストリーはライフル管の内外面を同時に測定し、リブの影響を除去することで、高精度な肉厚測定を可能にする技術を開発し、それを適用した新しい水浸UT装置を開発いたしました。
流動層ボイラー点検:ライフル管の肉厚測定技術の開発
リブにより超音波が乱反射し、正確な肉厚が測れないという問題を解決するため、内外表面それぞれに焦点を合わせたセンサを当て、得られたデータを比較・合成することで、リブの影響を除去しました。
上記の図のように内表面センサで内面を、外表面センサで外面を測定し、両者を比較することで、正確な肉厚値を得ることが可能になります。
流動層ボイラー点検:ライフル管水浸UT装置の開発と実機適用
循環流動層ボイラーの流動床式外部熱交換器(FBHE)蒸発器管は、ライフル管で構成されており、この肉厚測定のためにこの度開発した技術を用いたライフル管水浸UT装置を開発し、実機の検査に適用しました。設備数全64パネル(1日あたり約10パネル)の測定を実施し、その結果、流動材によるエロージョンと推定される著しい減肉が多数検出され、ライフル管水浸UT装置の有効性が確認できました。
流動層ボイラー点検:ライフル管水浸UT装置を使用した検査のメリット
ライフル管水浸UT装置の適用によって以下のようなメリットがあります。
1. これまで目視点検が主であった複雑な形状の部位に対し、定量的な検査が可能です。
2. 測定した肉厚値は色別してパネル図にプロット出来、応急捕集及び計画的な設備更新のための有効なデータとなります。
3. 本装置は、お客様のニーズ(定修期間や過去の減肉状況)に応じて水浸UTを提案することができ、検査コストの低減にも寄与できます。
流動層ボイラー点検:ライフル管水浸UT装置の幅広い適用範囲
ライフル管は流動層ボイラー全般の層内管や貫流ボイラーの火炉壁等に広く使用されていることから、これらの肉厚管理に対しても有効なツールとなるため、ボイラーの安全性向上、コスト削減、定検工期短縮など、多岐にわたるメリットをもたらす検査技術にご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問合せください。
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