7MW バイオマス発電設備の完成
2020年、三菱重工パワーインダストリーの7MW シリーズで6基目となるバイオマス発電設備をDSグリーン発電和歌山合同会社 紀南発電所殿に納入しました。これまでの標準仕様にプラスして設備効率の向上を図り、改良を加えた設備 です。そこで今回はその設備についてご紹介します。
最新版7MW バイオマス発電設備の特徴
この設備では以下の特徴を有し、所内動力の低減及び保守性を改善しています。
- 燃料供給フィーダに新規開発した2軸燃料供給フィーダを採用し所内動力の低減を図った。
- 通風機のダンパによる風量制御をなくしインバータによる回転数制御のみとすることで所内動力を低減した。
仕様及び全体構成
表1に発電設備の主な仕様を、図1にバイオマス発電設備の全体構成を示します。
ボイラ型式は自然循環式流動層ボイラで蒸発量は28.1t/h です。ボイラは、これまでの7MW バイオマス発電設備の先行機と同様に1次過熱器及び2次過熱器を流動層内に、蒸発水管をボイラの2パスに配置する構造とし、ボイラ循環ポンプ及び循環配管を削減した自然循環式としています。
またタービンと発電機は先行機と同様に、タービン翼の段数を11 段、発電端出力を7,100kW としました。ボイラとタービンはこれまでの標準配置を踏襲していて、工期短縮に寄与しました。使用燃料は、主に未利用材・ピンチップの2種類を混合燃焼させます。また燃料中の水分増加に対してはPKS(Palm Kernel Shell:パームヤシ殻)を最大30%迄投入し、燃焼の安定性を確保する運用としています。
燃料供給フィーダについて
開発試験結果
2軸燃料供給フィーダの開発試験時の主要結果及び特長をご紹介します。
図2にスクリュ軸間距離を変えた時のホッパ内の状況を示します。スクリュ軸間距離1,000mm ではスクリュ軸間に燃料チップの高い堆積が発生し搬送量も少ないことを確認しました。これは、スクリュ羽根先端間の距離が広がり不動領域が広がったためと考えます。
そして軸間600mm ではホッパ幅全体にわたる高い堆積が発生しました。スクリュ軸と側面ケーシング間距離が広いために不動領域ができ堆積に至ったものと推察されます。一方、軸間800mm では堆積は見られず、良好な燃料供給特性を確認し実機にも採用しました。燃料チップを堆積させない適正条件として、一連の試験結果からスクリュ軸間距離Lとスクリュ羽根径Dの比及びスクリュ羽根間の隙間C1 とスクリュ羽根と壁面間の隙間C2 の比に、下記の関係があることを確認しました。(図3参照:特許取得済)
1.3≦L/D≦1.6、0.3≦C2/C1≦0.4
2軸燃料供給フィーダの形状は、平底に比較して図3に示すU字状のUトラフ(特許取得済)の方が搬送効率が良く、負荷電流値も低いことが開発試験で確認され、実機に適用しました。
図4は2軸燃料供給フィーダのスクリュ羽根回りの有効搬送断面概略図です。木質チップ搬送の状況から、スクリュ羽根外径の外側においてもスクリュ羽根移動速度と同速度で木質チップが搬送される領域と、木質チップの搬送速度が徐々に低下して行き、図の速度分布に示すように最終的に0となる領域があることが確認できました。この結果により、木質チップの搬送量を精度よく評価することができました。
実機実証結果
図5は開発した2軸燃料供給フィーダを本設備の燃料に適用した時の実績特性です。横軸にフィーダ運転周波数、縦軸にフィーダ排出量(燃料量)を示しています。計画通りの良好な特性が得られました。燃料チップの堆積現象はなく、安定した燃料供給が可能でした。動力は、従来の4軸フィーダに比較して、約25kW(70%)低減することを確認しました。
通風機インバータ制御について
従来の通風機の風量制御は、制御ダンパにモータのインバータ制御を加えた設計が基本でしたが、DSグリーン発電和歌山合同会社紀南発電所ではインバータによる回転数制御のみとして所内動力を低減しました。
ダンパ駆動器を削減したことにより圧力損失や制御空気といったユーティリティの低減が可能に。またインバータ制御のみで十分な制御性が得られました。
表2は性能試験時の消費動力比較結果を表したものです。7MW先行機であるA発電設備やB発電設備と比較しても諸条件が若干異なるとはいえ、明らかな消費動力低減が確認できました。
試運転結果について
負荷変化試験
表3は負荷変化試験結果を表したものです。100%ECR⇔70%ECR 負荷帯で負荷変化率1~2%/分(70~140kW/分)での制御追従性の試験を実施し、安定した負荷変化特性であることを確認しました。
性能試験
表4は性能試験結果を表したものです。定格負荷運転において性能保証値である3つの環境規制値及び発電端出力が十分なことが確認できました。発電端出力は7,100kW(設計点)で計画しましたが、運用を6,800kW で行うことになったため、6,800kWを定格として性能試験を実施しました。
協調制御
図7は発電機出力および主蒸気(温度、流量、圧力)の試験結果を表しています。三菱重工パワーインダストリーの発電設備の特徴であるボイラ・蒸気タービン協調制御方式により、非常に安定した運転が可能です。
三菱重工パワーインダストリーの最新7MWバイオマス発電設備が実現したこと
DSグリーン発電和歌山合同会社 紀南発電所殿に納入した7MWバイオマス発電設備は以下の3項目を実現させました。今後も2050年のカーボンニュートラルに向けて、この構成を三菱重工パワーインダストリーの7MWクラスバイオマス発電設備の標準システムとして展開し、地球に優しい社会の実現を目指します。
- 新規開発した2軸燃料供給フィーダを採用し、所内動力を低減。
- 各通風機の制御をインバータによる回転数制御のみとすることにより、動力を低減し、上記1項と併せて、三菱重工パワーインダストリー納入の7MW 先行設備に比較して所内動力を70kW(約9%)低減。
- 計画時より、当社の工事および試運転のTA(Technical Advisor)がお客様との打合せに参画し、計画・設計部門と工事部門が一体となって取り組み遅延なく安全に納入。
出典:『三菱パワーインダストリー 技報Vol.5』より
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