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木質系バイオマス発電とは?メリット・デメリットをシンプル解説

2024/1/18

これまでも木質系バイオマス発電に関する記事を掲載して参りましたが改めて「そもそも木質系バイオマスとは?」というお話から、木質系バイオマス発電の燃料の種類やメリット・デメリット、ボイラーや費用面に関する事など、この記事さえ読めば木質系バイオマス発電の基礎が分るようにご紹介いたします。

木質系バイオマスとは?

木質系バイオマスを説明する前に、バイオマスの意味をご存じでしょうか?バイオマスは生物資源の表す「bio」と量を表す「mass」から成り立つ、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」という意味です。この中で木材に由来するものを木質系バイオマスと呼びます。

木質系バイオマスの種類には以下のようなものがあります。

・樹木の伐採や造材した時に発生する枝等の林地残材

・製材工場等から発生する樹皮や木屑

・住宅を解体した時に発生する建築廃材

・街路樹の剪定枝

林野庁の令和3年度 森林・林業白書によれば、平成30年の日本国内における、未利用のまま林地に残置されている未利用間伐材と呼ばれるものは年間約1,000万トン発生し、再利用率は26%、製材工場等から発生する樹皮や木屑等の残材は年間約500万トン発生し、再利用率(製紙原料等で)は約98%、建設現場で発生する木材は年間約550トンあり、そのうち約96%が再利用されています。

木質系バイオマス発電とは

木質系バイオマス発電は、木質系バイオマスを燃料として発電する発電設備の事です。発電方法は木質系バイオマス燃料をボイラーで直接燃焼させて発電する「蒸気タービン方式」と、ガス化した木質系バイオマス燃料を燃やして発電する「ガス化エンジン(ガスタービン)方式」に分かれます。三菱重工パワーインダストリーが手掛ける発電設備は「蒸気タービン方式」です。

蒸気タービン方式の仕組み図
蒸気タービン方式の仕組み図

木質系バイオマス燃料の分類および種類

木質系バイオマス燃料の種類は、薪、木質チップ、木質ペレット等、種類がとても多いのが特徴です。製紙工場等で紙を作った後のパルプの搾りかす等、産業廃棄物由来の燃料もあります。同一の種類でも形状や水分量が異なるので品質・成分にばらつきがあるのが特徴です。

木質系バイオマス発電のメリット・デメリット

木質系バイオマス発電は日本政府が掲げる2030年度、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すカーボンニュートラル社会の実現に向けて欠かせない発電方式です。ですがデメリットも存在します。メリットとデメリットをご紹介します。

6つのメリット

①  二酸化炭素の排出を抑制

樹木は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収します。そのため、木材をエネルギーとして燃やすと二酸化炭素が発生しますが、樹木の伐採後に植樹を行う事で発生した二酸化炭素は成長の過程で再び森林に吸収されます。

②  廃棄物の発生を抑制

建築現場での廃材や、街路樹を伐採した際の枝や木屑はそのままゴミとして捨てられるものです。それらを木質系バイオマスの燃料として有効活用することにより廃棄物を減らすことができ、循環型社会に役立ちます。

③  化石燃料からの脱却

日本はエネルギーの多くを輸入による化石燃料に頼っています。化石燃料は有限であり、世界情勢によって価格も大きく左右されます。日本は国土の約3分の2が森林です。貴重な国産のエネルギー源として活用すれば輸入依存を少しでも脱却することができます。

④  燃料をストック

太陽光発電や風力発電は太陽の光や風による発電システムなので、燃料をストックしておくことができません。しかし木質系バイオマス発電は、固形燃料なのでストックが可能です。太陽光や風力のように天候に大きく左右されないのも魅力です。

⑤  林業業界への寄与

森林は国土の保全や水源の保全など、様々な機能があります。これらの機能をしっかりと発揮するためには、間伐や伐期を迎えた樹木を伐採する等、適切な整備が不可欠です。これにより年間約2,000万立方メートル発生している未利用間伐材が燃料になれば、林業業界にも大きく寄与できます。

⑥  地域活性化

その地域の資源を活用し発電所を建設することで、地元の雇用を創出し新しい産業が生まれます。さらに、地震や大雪等により停電が発生した際にも地元の発電所として、地域の家庭に送電することが可能です。

3つのデメリット

①  燃料調達コストが不安定

燃料に用いられる間伐材や林地残材等の未利用材は建材用途に利用できなかったもので、それらを木質系バイオマス発電の燃料として利用するには輸送コスト等を考えると非効率的です。また木材の用途としては副次的な位置づけにあるので、建築需要動向に左右され供給量の見通しが立ちにくいため価格が一定化しないという課題があります。そのため国内材より少々価格が高くても量が安定する輸入木材を活用する動きがありますが、これも世界情勢によって供給が絶たれたり価格が高騰したりするリスクがあります。

②  燃料の品質・成分のばらつきの影響が大きい

木質系バイオマスは形状や水分量がそれぞれ異なるため、品質・成分にばらつきが生じてしまいます。このばらつきは安定燃焼の妨げとなり発電効率が下がり一定の発電量が担保できなくなる可能性があります。

ただし、三菱重工パワーインダストリーの流動層ボイラーは安定燃焼・安定発電が可能とすべく、幅広い燃料品質・成分に対応出来るように設計されています。

③  燃料流通時の二酸化炭素発生

木質系バイオマス発電は樹木が光合成する事により、二酸化炭素を吸収して燃料が燃焼した際に発生する二酸化炭素がニュートラルになるところがメリットですが、木質系バイオマス燃料の木材を採取・加工する場所から、それを利用する発電所までに輸送する際に発生する二酸化炭素の量が吸収量を上回ってしまってはデメリットになり得ます。その為、燃料調達ルートや発電所を建設する場所はとても重要になります。

木質系バイオマス発電のボイラーとは

2023年度以降のFIT適用が可能な2MWクラスの発電設備に用いられるボイラーには流動層ボイラーとストーカボイラーの2種類あります。三菱重工パワーインダストリーのボイラーは流動層ボイラーです。バイオマス燃料は種類によって形状や水分量等の品質・成分が異なるため、この流動層ボイラーにはそれらの燃料に十分対応できるように様々な技術が導入されています。

流動層ボイラーは流動体である砂が持つ熱量が大きいため燃料中の水分量など、燃料の変動に対応しやすい燃焼方式​です。さらに放散熱量と熱損失も少なく、多種燃料の混焼もできる等、安定した運転が可能です。

流動層ボイラーの燃焼の流れは以下のようになっています。

STEP1

流動砂を加熱し、その砂が持つ熱(保有熱)により燃料が乾燥・加熱される

流動砂を加熱し、その砂が持つ熱(保有熱)により燃料が乾燥・加熱される

STEP2

燃料が着火する温度に達し、燃料の燃焼が開始される。

燃料が着火する温度に達し、燃料の燃焼が開始される。

STEP3

燃焼により、流動砂が加熱されて保有熱量が増加される。

燃焼により、流動砂が加熱されて保有熱量が増加される。

木質系バイオマス発電コスト

木質系バイオマス発電にかかるコストは、初期建設費用とランニングコストの2つです。初期建設費用は発電規模等により異なります。ランニングコストは燃料の種類によって異なりますが、平成25年度木質系バイオマス利用支援体制構築事業「発電・熱供給・熱電併給推進のための調査」によると木質系バイオマス発電所の原価構成の例として、燃料費が約7割を占めるという結果になっています。

木質系バイオマス発電の現状

木質系バイオマスのうち、製材工場等残材と建設発生木材は、製紙原料等としてほぼ利用済みです。一方、間伐材等の林地残材の利用率は低くなっています。木質系バイオマスのエネルギー利用を進めるためには、林地残材の活用が不可欠です。

木質バイオマスの利用状況

林野庁の資料「木質バイオマスの安定調達に係る申請前の調整について(令和4年10月31日)」によれば、2022年3月末、木質系バイオマス発電の国の支援制度であるFITの計画認定を受けた木質系バイオマス発電施設は443か所で認定が有効になっています。そのうち183か所で稼働しています。主に未利用木材を使用する木質系バイオマス発電施設は243か所の認定が有効で、このうち105か所で稼働しています。

日本は国土の約3分の2が森林です。森林資源は人工林を中心に蓄積が増加し、近年は毎年約6,000万平方メートルずつ増えています。人工林の半数が昭和41年生まれ以上となっており、主伐期を迎える中「伐り、使い、植える」という持続可能な森林経営のサイクルを構築する事が必要です。

林野庁「森林資源の現況」林野庁業務資料より
林野庁「森林資源の現況」林野庁業務資料より
林野庁「森林資源の現況」(平成29年3月31日現在)
林野庁「森林資源の現況」(平成29年3月31日現在)

2021年の日本の木材供給量は8,000万平方メートル程度で、うち国産材は3,000万平方メートル程度です。木材自給率は2002年の18.8%を底辺として10年連続上昇傾向で推移し2021年は41.1%にまでになりました。

林野庁「木材需給表」
林野庁「木材需給表」

木質系バイオマス発電の将来性について

木質系バイオマス発電は、再生可能で環境に優しいクリーンなエネルギーです。また、カーボンニュートラルな発電方式であることから、将来性が高く評価されています。また、木質系バイオマス発電の導入容量の見通しは、2020年が2.13GWの実績に対し、2025年度は5.23GW、2030年度には6.26GWを見込んでいます。

そして2030年の発電量は409億kWhを見込んでいます。木質系バイオマス発電は、国が資金を投入したり支援を続けたりしているため、補助金を受けながら導入できる状況です。FIT制度があるので売電収入を伸ばしやすい発電設備です。

木質系バイオマス発電は、地域の産業・地域との関わり、森林の活性化等に極めて重要な役割を担うと共に、調整電源として電力の需給調整に重要な役割を果たすと言えます。

木質系バイオマス発電の導入事例

三菱重工パワーインダストリーの木質系バイオマス発電についての紹介記事です。ぜひご覧ください。

地域密着型 小規模(2MW、7MW、10MW、20MW)級 木質系バイオマス発電とは

建築廃材を有効活用する木質系バイオマス発電

7MW バイオマス発電設備の完成

木質系バイオマス発電における補助金

国が行っている再生可能エネルギーの固定価格買取制度であるFIT制度をはじめとして、木質系バイオマス発電所における補助金は様々あります。以下はその一部です。このほか地方自治体によっても支援制度があります。建設を予定している土地がありましたら、その自治体にお問合せください。

三菱重工パワーインダストリーは地球のため、日本社会の明るい未来のために、再生可能エネルギーである木質系バイオマス発電設備や地熱発電設備のエンジニアリング事業に取り組んでいます。バイオマス発電所に関しては2MW以上のクラスに対応しています。バイオマス発電事業に興味がおありの方はぜひお気軽にお問合せください

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