そもそもボイラーってどんなもの?【産業用ボイラー概論-その1】
ボイラーと聞いて漠然と知識をお持ちの方はいらっしゃるかと思いますが、詳しくどんな種類があってどんな構造なのかをご存じの方はそう多くないかと思います。そこで今回はボイラーの種類と構造についてご紹介します。
そもそもボイラーとは?
ボイラーとは、密閉した容器内に水または熱媒(特殊な油など)を入れ、火気、燃焼ガス、その他の高温ガスまたは電気によって加熱し、蒸気または温水を作って供給する装置です。蒸気ボイラーと温水ボイラーに区別されます。
発電事業用及び工場などの産業分野に使用されるボイラーは、一般的には油、ガス、石炭等の燃料を燃焼させ、その時に生じる熱によって水を加熱し、水蒸気を発生させる蒸気ボイラーが多く、発電事業用が蒸気を発電用に用いているのに対し、産業用の場合は発電用と加熱用の両方を用途にしています。家庭用ボイラーに比べて規模が大きく、より高温・高圧の蒸気や温水を大量に発生させることができます。
ボイラーは大別して、本体、炉、付属装置(送風機、ポンプ、燃料移送装置、排ガス処理装置、灰処理装置など)および付属品で構成されます。
ボイラーの型式の変遷
ボイラーの発達の歴史として、本格的な蒸気動力は1712年のニューコメン機関(4kW)をもって始まり、ボイラーもその時に生まれたといえます。その後、ボイラーは型式を変えて進歩し、1712年に丸ボイラーが誕生、1825年に水管ボイラーの実用化、1925年に貫流ボイラーが発明されるなど、ほぼ100年刻みで新しい形式のボイラーに発達してきました。
ボイラーの構造による分類
ボイラーは缶体の材料によって、大きく鋼製ボイラーと鋳鉄製ボイラーに分類され、高圧で使う大規模なボイラーを含め、ボイラーの多くは鋼製です。更に鋼製ボイラーは、その丸ボイラー、水管ボイラー、特殊ボイラーに分類されます。
以下、一般的に多く使用されている丸ボイラーと水管ボイラーについて解説していきます。
丸ボイラーと水管ボイラーは水循環形式が大きく異なります。
1.丸ボイラー
円筒形の胴体内に水を入れ、ヤカンのように胴体の外側から加熱する、または胴体の中に炉筒や煙管などを設けて管の中に燃焼ガスを流して加熱して蒸気を得るものです。構造上高圧用とすることは難しく、また大容量のものには適しません。ただ、構造的にはシンプルで、イニシャルコストが安く、点検や清掃といった維持管理が楽で、ランニングコストも比較的安く済むのが特徴です。
丸ボイラーには、立てボイラー、炉筒ボイラー、煙管ボイラー、炉筒煙管ボイラーの4つがありますが、炉筒煙管ボイラーがもっともポピュラーとなっています。
2.水管ボイラー
丸ボイラーが炉筒や煙管に燃焼ガスを流すのに対し、水管ボイラーは水管といわれる複数の管の中に水を通して、それら水管群の周りを加熱することで、水管の内部を循環する水と熱交換して、効率よく蒸気をつくる仕組みになっています。高圧に適し、大容量のものも製作可能で、発電事業用・産業用に多く用いられています。
水管ボイラーを水の流動方式で分類すると、自然循環式、強制循環式、貫流式の三つになります。
三菱重工パワーインダストリーが取り扱っているのは水管ボイラーになりますので、以降は水管ボイラーについて解説していきます。
水管ボイラーの用途による分類
水管ボイラーで発生させた蒸気をどのように使用するかによって、事業用と産業用に分類されます。
① 事業用ボイラー
発電:蒸気タービンで発電させ市中に売電する
② 産業用ボイラー
発電:蒸気タービンで発電させ工場内で使用する
乾燥:(例)紙を作るときに蒸気を使用して紙を乾燥させる。(製紙会社)
加熱:(例)ガソリンを作るときに蒸気を使用して加熱する。(石油会社)
洗浄:(例)容器などを洗浄するときに蒸気を使用する。(食品会社)
暖房:(例)暖房用として蒸気を使用する。
水管ボイラー用燃料による分類
燃料による分類は次のようになります。
① 液体燃料
重油、軽油、灯油、タール、ナフサ
残渣油系:アスファルト、減圧蒸留残油(VR)、副生油
② 気体燃料
高発熱量:天然ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、リファイナリガス
低発熱量:発生炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガス、転炉ガス、COガス
③ 固体燃料
石炭、石油コークス
バイオマス廃棄物系:木屑(チップ、建築廃材)、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)、タイヤ、スラッジ、バーク等
④ その他
黒液
水管ボイラーの構造
水管ボイラーは一般的に、比較的小径のドラム(円筒胴)と多数の水管で構成されており、水管内で水を蒸発させます。高圧に適していて大容量のものも製作可能です。
水管ボイラーでは細い水管が強い熱を受け、その内部で多量の蒸気を発生することになるのでボイラー水が確実に流動し、水管内面が常に水に接することで、十分な熱伝達が行われる必要があります。
水管ボイラーの特徴
水管ボイラーは構造上、高圧大容量にも適しています。燃焼室を自由な大きさに作れるので燃焼状態がよく、様々な燃料や燃焼方式に適応できます。そして伝熱面積を大きく取れるため、一般的に熱効率が高いのも特徴です。
伝熱面積あたりの保有水量が少ないので、起動時間を短くすることができます。その反面、負荷変動によって圧力や水位が変動しやすいため、運転制御上の注意が必要です。さらに、給水およびボイラー水処理にも注意が必要です。特に高圧ボイラーでは厳密な水管理を行うことが必須となります。
今回はボイラーの基礎知識について解説いたしました。
ボイラー概論(その2)では、水管ボイラーの自然循環式、強制循環式、貫流式の三つの型式について、その特徴などについて解説致します。
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