バイオマス発電における現状と課題とは

木質系バイオマス発電を含む、バイオマス発電の日本における現状と課題について、三菱重工パワーインダストリーが手掛けるバイオマス発電所のご紹介と共にお伝えいたします。
そもそもバイオマス発電とは?
経済産業省 資源エネルギー庁によるとバイオマス発電とは、動植物から生まれた生物資源の総称である“バイオマス”を用いて「直接燃焼」および「ガス化」する等して、発電を行う仕組みのことです。政府が掲げる2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指していますが、バイオマス発電は未活用の生物資源を燃料とするため、循環型社会に大きく貢献することが可能な今まさに注目される発電システムです。
バイオマス発電の燃料は大きく以下の6つに分類されます。
・木質系
・農業・畜産・水産系
・建築廃材系
・食品産業系
・生活系
・製紙工場系

これらの燃料の中から三菱重工パワーインダストリーが手掛けるバイオマス発電は主に木質系 、建築廃材系、製紙工場系になります。
今、バイオマス発電が注目される理由とは
2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けてバイオマス発電は太陽光発電や風力発電と共に注目されている発電システムですが、発電させるためのエネルギーが太陽光や風力等のように自然環境(天候)に依存しないため、安定した発電量が確保できるメリットがあります。また、木質系バイオマス発電においては、燃料を燃焼させる際に二酸化炭素が排出されますが、計画的に植樹を行うことでカーボンニュートラルな状況を保つことができます。さらに地方に小中規模の発電所を建設することで、資源と電力の地産地消の実現や地元の雇用の確保が期待でき、地域活性化に貢献できます。
バイオマス発電の現状の導入割合
注目されるバイオマス発電ですが、特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所の調べによると2022年の日本国内の全発電電力量(自家消費を含む)の電源別割合を推計した結果、自然エネルギーの全発電電力量に占める割合は22.7%でそのうち、バイオマス発電が占める割合は4.6%でした。これは太陽光、水力についで3位の割合です。

さらに、2016年からの日本の全発電電力量に占める自然エネルギー割合の推移を見てみると、バイオマス発電は2016年には1.9%でしたが、2020年は3.2%となり順調に割合を増やしていることが分かります。水力発電が2021年は7.8%だったのに対し2022年は7.1%と減少。地熱発電と風力発電は2020年から3年連続で0.3%、0.9%と横ばいの状況から見てもバイオマス発電の将来性の高さが推測されます。


なお、日本各地の化石燃料火力を除くエネルギーの割合は次のグラフのようになっています。

日本のみならず世界へ目を向けてみると日本の自然エネルギーにおける年間発電電力量の割合が先進国の中でも最低レベルであることが分かります。

デンマークやオーストリア、ポルトガル等、日本よりはるかに国土の狭い国々でバイオマ発電の割合がはるかに大きいことを踏まえると日本の可能性の高さが分かるのではないでしょうか。
バイオマス発電のメリットとは
バイオマス発電のメリットは大きく分けて6つあります。
① 二酸化炭素の排出を抑制
② 廃棄物の発生を抑制
③ 化石燃料からの脱却
④ 燃料をストックできる
⑤ 林業業界への寄与
⑥ 地域活性化
このようなメリットからバイオマス発電の促進が望まれていますがいくつか課題もあり、思うように進んでいない現実もあります。
バイオマス発電の課題とは
可能性の塊であるバイオマス発電ですが課題もあります。燃料の収集や運搬、管理等にコストがかかることや石油や天然ガスに対して発電量を確保するために、はるかに多くの物量が必要であるためエネルギー効率が低いのも事実です。そして化石燃料火力や原子力のような大容量の発電出力を実現することは難しく、同量の電力確保のためには数多くの発電所が必要となります。そのための土地の確保も課題です。また、木質系の場合は確実な燃料確保のために輸入に頼らざるを得ない場合も多く、世界情勢等によってコストが安定しないというリスクもあります。
さらに農業系バイオマスの場合、とうもろこしや小麦など食料となり得る燃料に関して食料競合が起こるのではないか等の懸念もあり、食料競合の起こりえないバイオマス燃料の判断基準や確認方法をどうするか等の議論もあります。
また、最終的に燃料として燃焼させた際に灰が発生しますがこれを産業廃棄物として処分しなければいけない、という課題もあります。
こういった課題を踏まえてもなお、カーボンニュートラル社会の実現へ向けてバイオマス発電はなくてはならない発電システムです。その為に国や地方自治体は様々な補助金制度を整えています。発電所建設を予定しているエリアの補助制度等はぜひ自治体にお問合せいただければと思います。
木質系(直接燃焼)2MW~10 MWクラスのバイオマス発電に関しては、三菱重工パワーインダストリーにご相談いただければ解決に向けてサポートさせていただきます。

バイオマス発電の今後の展望
一般社団法人バイオマス発電事業者協会が2021年に発表した今後のバイオマス発電の導入見通しによると、「一般木質・農作物残さ」と「非効率石炭火力→バイオマス(※)」の合計した導入量の推移は以下のようになっています。
2021年:198万kW
2025年:411万kW
2028年:455万kW
2030年:484万kW
2040年:1,773万kW
2050年:2,098万kW

※…2031~2039年非効率石炭火力(2,460万kW)の半数がバイオマスに転換(出力20%低下)
三菱重工パワーインダストリーのバイオマス発電への取り組み
三菱重工パワーインダストリーは全国各地にバイオマス発電設備用流動層ボイラーを納入しています。なお、この流動層ボイラーは木質系(木屑、建築廃材、木質ペレット等)にとどまらず、都市ごみ、カットタイヤなど多岐な燃料の混焼にも対応可能です。様々な資源を燃料として燃焼することができればバイオマス発電をより普及させることができます。その為にも私たちは日々、燃焼技術の開発に邁進しています。
「こんなものも燃料として扱えるのかな?」という疑問でも構いません。技術的に対応が可能かどうか検討致しますので、お気軽にお問合せいただければ、課題も含めて共に課題解決へと二人三脚でサポートさせていただきます。
【参考】
経済産業省 資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/
環境省
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/
特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所
経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/biomass_sus_wg/pdf/008_02_00.pdf
一般社団法人バイオマス発電事業者協会
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/030_02_00.pdf