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interview

水素焚き点火・助燃バーナー、加熱炉・工業炉用水素焚きバーナー開発について~津村俊一氏(主幹技師・工学博士)インタビュー

2023/9/8

水素の燃料利用のために行っている開発について陣頭指揮を執る津村俊一氏(工学博士)にインタビューしてきた本連載。前回までは産業用ボイラー向け水素焚きガスバーナー開発について前半・後半に分けてインタビューを行いました。最終回は現在進行中の水素焚き点火・助燃バーナー、加熱炉・工業炉用水素焚きバーナーの開発についてご紹介します。

水素焚き点火・助燃バーナーとは?

――点火・助燃バーナーとはどんなものなのか教えてください。

津村:点火バーナーとは主バーナーに火をつけるためのもので、主バーナーへの点火時のみ使用します。主バーナーを水素焚きとした場合、点火バーナーも水素焚きとすることで、燃料種の同一化によるコスト低減が期待できます。一方、助燃バーナーとは主バーナーの燃焼を助燃(補助)するもので、主バーナー燃焼中は連続して使用します。主バーナーが燃え難い環境にある場合にその安定燃焼を助ける役割を担うものです。

点火バーナーの構成例
点火バーナーの構成例

水素焚き点火・助燃バーナーの開発へ向けて

――開発にあたりどんな課題があるのでしょうか?

津村:現在、水素の価格が高いので、100%水素を使うことは難しいですよね。ですので都市ガスなどの専焼あるいは都市ガスなどと水素を混焼して使えるようにする必要があります。燃料を変えても使えるようにする。その方が適用範囲も広く汎用性があり、将来完全に水素のみになった時にも使えます。

――燃料を混ぜても使えるようにすれば今からでも採用することができますね。そして将来、水素100%になってもそのまま使えるのは費用面からしても嬉しいですね。

津村:そうですね。まあそのようにしようとした時に、安全性の検討等が必須になるわけです。水素は火炎温度が高いので、火炎と接触する部品、例えば点火源となるスパークプラグや、火炎有無を検出するための接炎電極の構成や材質の検討が必要になります。そして水素焚きガスバーナーの時にもお話ししましたが、ここでもガスノズルが重要です。

――やはり肝はガスノズルなのですね。

津村:そうです。ガスノズルが大切なのです。なので今回も12種類程さまざまな形状のノズルを試作しました。点火バーナーの役割は、点火後安定した火炎を形成して、火炎有無を判定すること、点火バーナー火炎で主バーナーを確実に点火させること、そして安全性及び耐久性を有することです。水素の火炎温度は高いので、各部品を焼損させないようにノズル構成を適正化することが大変重要となります。焼損させないように温度との戦いの日々です。様々なテストを経て色々ヒントが出てきましたので、きっといいものができると思います。

加熱炉・工業炉用水素焚きバーナーの開発へ向けて

――加熱炉・工業炉用水素焚きバーナーの開発についても教えてください。

津村:水素焚きガスバーナー、水素焚き点火・助燃バーナーの開発を行うなかで、加熱炉・工業炉でも水素焚きとの親和性とニーズが高いことが分かってきました。それで水素焚き点火・助燃バーナーと並行して開発を行う事にしました。

――こちらも様々な燃料に適用できるように開発しているのですか?

津村:そうです。水素だけではなく、天然ガスやその他のガスにも適用できるように開発しています。そうすることで多くの加熱炉・工業炉に使うことができます。

――どのような課題があるのでしょう?

津村:まずは安全性ですね。他には火炎の形状等です。火炎の長さや拡がりの検討が必要です。2023年度中に一定の成果を上げられるように、9月と12月に試験を行う予定です。まだまだやらなければいけないことは山のようにありますが、必ず良いものができると信じています。

燃料の水素利用を見据えた様々な取り組みの先にある未来

水素焚きガスバーナーの開発。そして水素焚き点火・助燃バーナー、加熱炉・工業炉用水素焚きバーナーと着実に成果を出しながら私たちは産業用ボイラーの水素燃料利用のための開発を推進しています。それは2050年カーボンニュートラル社会実現のため。そして地球環境を守るという私たちに課せられた重要なミッションのためです。しかしそれを実現するために余計なコストや時間がかかってしまってはいけません。私たちは今ある産業用ボイラーの設備を最大限利用しながら、水素焚きへとスムーズに転換できるように設備を開発しています。未来への投資のために今からできることをスタートさせたいと思われたらぜひ三菱重工パワーインダストリーにお問い合わせください。どんな些細なことでもパートナーとして伴走いたします。

プロフィール

プロジェクト事業部 主幹技師
博士(工学)、技術士(機械部門)
津村 俊一

1980年に旧バブコック日立(株)に入社。その後、三菱日立パワーシステムズ(株)、三菱パワー(株)、三菱重工業(株)への事業統合を経て、現在は三菱重工パワーインダストリー(株)に勤務中。これまで、事業用ボイラー並びに産業用ボイラーの主に燃焼器の開発・設計に従事。2019年に学位(工学博士)、2020年に技術士(機械部門)の資格を取得。現在、2020年に採択されたNEDO助成事業として、産業用ボイラー水素焚きガスバーナーの開発を継続推進中。

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