水素発電とは?仕組みとメリット・デメリットを解説
水素発電はカーボンニュートラル社会の実現へ向けたクリーンなエネルギーとして、バイオマス発電等と共に注目される発電方式です。電源のゼロエミッション化や再生可能エネルギーの効率的な活用、水素・アンモニアの利用によるエネルギーの安定供給などが期待され大量の需要が見込まれています。政府は第6次エネルギー基本計画において、2030年度の電源構成のうち、水素・アンモニアで1%程度を賄うこととしています。今回は水素発電の仕組みとメリット・デメリットをご紹介します。
水素発電の3つの種類。その仕組み
水素を燃料とした発電方式には3つの種類があります。
① 汽力発電
汽力発電は「水素」または「水素+他の燃料」をボイラーで燃焼させたことにより発生した蒸気によってタービンを回転させて発電機を動かし発電する方法です。
② ガスタービン発電
ガスタービン発電は「水素」または「水素+他の燃料」をガスタービンで燃焼しタービンを回転させて発電機を動かし発電する方法です。
③ 燃料電池発電
燃料電池発電は「水素」と「酸素」の化学反応から直接電力を取り出す方法です。
上記のうち、三菱重工パワーインダストリーは汽力発電に対応しており、このボイラーに使用することが可能な水素焚きバーナー(専焼&混焼可)の開発を完了しています。
ガスタービン発電に関しては、三菱重工業がこれまで小型ガスタービンにおいて混焼から専焼まで燃焼器を開発し、実機実証まで実施しています。大型ガスタービンにおいても30%混焼や専焼の燃焼器開発を進めています。
2050年のカーボンニュートラル社会の実現へ向けた中長期の水素利活用の拡大に向けて、水素発電は水素の製造、水素の輸送・貯蔵そして利用において、産学官による革新的技術の研究開発が必要です。
水素発電はなぜ注目されるのか?3つのメリット
エネルギー資源としての水素が注目されるのには3つのポイントがあります。
① 地球上にあるさまざまな資源からつくることができる
水素はさまざまな資源からつくることができます。電気を使って水から取り出したり、石油や天然ガスなどの化石燃料やメタノールやエタノールから取り出したり、下水汚泥、廃プラスチック等、多様な資源が水素の素になり得ます。また、製鉄所や化学工場等では、製造過程において副次的に水素が発生しています。
② 二酸化炭素を排出しない
水素は酸素と結びつけることで発電したり、燃焼させて熱エネルギーとして利用したりする事ができますが、その際に二酸化炭素を排出しないのでクリーンなエネルギーとしてカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
③ 貯めておくことができる
水素は太陽光発電や風力発電等とは違いエネルギーを形を変えて貯めておくことができます。
これら3つの特徴から水素は日本にとって究極のエネルギー源となる可能性があります。日本は90%以上の一次エネルギーを海外からの化石燃料に輸入に頼っており、特に特定地域への依存度が高いため、国際情勢の影響を受けやすく「エネルギー安全保障」の課題があります。日本国内の資源を水素発電に利用できればエネルギー自給率が向上し、エネルギー安全保障の課題を解決へと導ける可能性があります。
水素発電におけるデメリットとは
水素発電が抱える課題もいくつかあります。
① 水素の安全性
水素は気体の中でもっとも軽く、無色・無臭で拡散・漏洩しやすく、金属材料を脆化させる、着火しやすいといった性質があります。これらの特性を鑑み国際的な基準の策定を日本が先導し、適切な保安基準を整備する必要があります。
② 水素の供給コスト
現状の供給コストから利活用の拡大に向けて大幅なコストダウンが必須です。そのためには安価な材料を使って水素をつくり、水素の大量製造や大量輸送を可能にするサプライチェーンを構築し、燃料電池自動車(FCV)や発電、産業利用などで大量に水素を使用するサイクルを構築する事が必要です。政府は2030年に30円/Nm3(約334円/kg)、 2050年に20円/Nm3(約222円/kg)の目標を掲げています。
水素には3つ以上の種類がある
元素としての水素は一つですが、その製造方法からグレー水素、ブルー水素、グリーン水素などに分類されています。この他にもいくつか分類がありますが、代表的なものがこの3つです。このうち、グレー水素は化石燃料をベースとして作られています。安価な原料を使って水素をつくるためにあまり使用されず安価な「褐炭(低品位な石炭)」や未使用のガスなどを原料として使う研究が進められています。
ブルー水素も化石燃料をベースとしていますが、水素の製造工程で排出された二酸化炭素を回収したり利用したりして排出量を抑えたものを言います。
そしてグリーン水素は再生可能エネルギーなどを使って、製造工程においても二酸化炭素を排出せずにつくられたものです。
水素発電への三菱重工パワーインダストリーの取り組み
三菱重工パワーインダストリーでは水素発電用ボイラーに用いるバーナーの実用化に取り組んでいます。このバーナーは水素混焼率が0%~100%まで、すなわち、水素の使用を前提としない燃焼に対応が可能なので、将来の水素廉価普及を待つことなく、今からでもすぐにボイラーに装着して使用頂けます。
【水素発電】低炭素化・脱炭素化を可能に!水素焚きバーナー技術の実用化へ
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-04/
【水素発電】三菱重工パワーインダストリーの水素焚きバーナーで、“水素の廉価普及を待たない選択”を! ―石炭焚きボイラーを天然ガス焚きに燃料転換し、将来の水素焚きに備える事が可能に―
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-05/
産業用ボイラー向け水素焚きガスバーナー開発への道~津村俊一氏(主幹技師・工学博士)インタビュー<前半>
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-06/
産業用ボイラー向け水素焚きガスバーナー開発への道~津村俊一氏(主幹技師・工学博士)インタビュー<後半>
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-07/
水素焚き点火・助燃バーナー、加熱炉・工業炉用水素焚きバーナー開発について~津村俊一氏(主幹技師・工学博士)インタビュー
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-08/
持続可能な地球の未来へ向けて、そして2050年カーボンニュートラル社会の実現へ向け三菱重工パワーインダストリーは、水素発電はもとよりバイオマス発電、地熱発電等、さまざまな発電方法の技術開発を促進し、クリーンエネルギーを生み出す努力をし続けて参ります。
参考)
令和5年6月6日 再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議 「水素基本戦略」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/suiso_seisaku/pdf/20230606_2.pdf
資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/suiso.html
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/suiso_tukurikata.html
公益財団法人 東京都環境公社
https://www.tokyo-suisomiru.jp/hydrogen-energy/