水素エネルギーとは?将来性や課題を解説
2050年カーボンニュートラル社会へ向けて政府は第6次エネルギー基本計画の中で、2030年の電源構成の1%程度を水素エネルギーで賄うこととしました。未来を担う新しいクリーンエネルギーとして期待の高まる水素エネルギーの将来性や課題についてご紹介します。
水素エネルギーとは?注目の理由
水素は無色、無臭、地球上でもっとも軽い気体です。水素分子の状態として存在する事はほとんどありませんが、他の元素との化合物として大量に存在しています。拡散速度が速く、燃えても火炎が見えにくい等の特徴があります。さまざまなエネルギー源から製造が可能で利用方法としても発電や熱利用等、多岐に及びます。再生可能エネルギーもしくは二酸化炭素を分離・回収し、地中などに貯留する技術をもったCCS(※1)付き化石燃料から製造するケースでは二酸化炭素を出さずに製造することが可能です。貯蔵し輸送することもできるので、環境やエネルギーの安定供給の観点から考えた時に大変重要な資源と言えます。
その水素から作られる水素エネルギーはエネルギーの多様化や環境負荷の低減に貢献します。さらに燃料電池の発電効率は35~60%ですが、電気と熱を合わせた総合エネルギー効率は80%を超えていて、効率的にエネルギーを利用することができます。
※1…CCS(Carbon dioxide Capture & Storage:CO₂分離回収)
水素エネルギーの作り方
水素には「グレー」「ブルー」「グリーン」の三種類あります。
この三種類以外の分類方法もありますが、ここでは代表的な三種類をとり上げます。
〇グレー水素
天然ガスや石炭等の化石燃料を利用して作られる水素で、製造過程で二酸化炭素が大気中に排出されます。
〇ブルー水素
グレー水素同様に、化石燃料を利用して作られる水素です。ただし、二酸化炭素は大気中に排出されずに回収、貯留、利用されます。
〇グリーン水素
水を太陽光発電や風力発電から得た電気で分解して作られた水素です。
上記のように、化石燃料を燃焼させてガスにし、そのガスから水素を作る「改質法」と呼ばれるものと、水を電気分解して水素を作る「電解法」の二種類が存在します。化石燃料を使用しない電解法で作られたグリーン水素は二酸化炭素も排出せず、クリーンなエネルギーです。しかし、水を電気で分解するには大規模な電力が必要になるためできるだけ安価に電気を発生させなければいけません。また電解を行う「水電解装置」の開発を進めることで装置そのもののコストを低減することもできます。2020年3月に福島に誕生した「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」には世界有数の水電解装置があり、再生可能エネルギー等から水素を大規模に製造する実証プロジェクトが行われています。
水素エネルギーの課題とは?
現状では水素を作ったり運搬したりするのにコストがかかるため、水素の普及のためには燃料関連コストを既存の火力発電で使われる天然ガス並みに抑える必要があります。「水素・燃料電池戦略ロードマップ」による水素の目標CIF(※2)コストは2030年頃に30円/Nm3将来的に20 円 /Nm3 程度まで抑えることとしています。
また、長距離輸送のための技術や水素発電等の利用技術の開発、そして全体としての水素サプライチェーンの構築も重要となってきます。
※2…CIF(Cost Insurance and Freightの略称)
水素エネルギーの普及を目指して私たちができること
三菱重工パワーインダストリーでは発電用ボイラーに用いる水素焚きバーナーの製品開発を完了しました。現在、実運用に向けて準備を進めています。このバーナーは水素混焼率が0%~100%で燃焼可能、つまり水素以外のガスだけでも燃焼が可能です。従って、現時点では既存のボイラーに装着して、水素以外の天然ガスなどの化石燃料で発電をしておき、将来、水素のコストが抑えられて広く普及し始めた時に水素発電のバーナーとして利用することができます。ただし、バーナー単体の取り替えだけではなく、周辺機器の見直しや交換が必要になります。見直しや交換の規模は設備毎に異なりますので、このバーナーにご関心ある場合にはお問い合わせ下さい。
私たちは未来のカーボンニュートラル社会へ向けて、発電事業者や産業用火力発電をご利用の皆さまのご負担になることなく水素利用ができる技術開発に邁進しています。以下にご紹介しておりますのでぜひ、ご覧ください。
【水素発電】低炭素化・脱炭素化を可能に!水素焚きバーナー技術の実用化へ
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-04/
【水素発電】三菱重工パワーインダストリーの水素焚きバーナーで、“水素の廉価普及を待たない選択”を! ―石炭焚きボイラーを天然ガス焚きに燃料転換し、将来の水素焚きに備える事が可能に―
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-05/
産業用ボイラー向け水素焚きガスバーナー開発への道~津村俊一氏(主幹技師・工学博士)インタビュー<前半>
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-06/
産業用ボイラー向け水素焚きガスバーナー開発への道~津村俊一氏(主幹技師・工学博士)インタビュー<後半>
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-07/
水素焚き点火・助燃バーナー、加熱炉・工業炉用水素焚きバーナー開発について~津村俊一氏(主幹技師・工学博士)インタビュー
https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-08/
参考)
再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議「水素基本戦略」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/suiso_seisaku/pdf/20230606_2.pdf
新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO 水素エネルギー白書」
https://www.nedo.go.jp/content/100567362.pdf
内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/juyoukadai/energy/11kai/sanko2_4.pdf
経済産業省 資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/suiso_tukurikata.html
経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/suiso_nenryo/roadmap_hyoka_wg/pdf/002_s05_00.pdf