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水素は再生可能エネルギーではない?カーボンニュートラル社会の実現に向けて注目される理由とは

2024/4/18

カーボンニュートラル社会の実現に向けて再生可能エネルギーが注目されています。その中の一つに「水素発電」がありますが、厳密にいうと水素は再生可能エネルギーではありません。いったいそれはなぜなのか?ご紹介します。

水素は一次エネルギーではない

エネルギーには大きく分けて一次エネルギーと二次エネルギーがあります。一次エネルギーは石油や天然ガス、石炭、木材、水力、原子力、風力、地熱、太陽光等がそれにあたり、自然から直接採取でき、そのもの自体がエネルギー源であるものを指します。その中で木材や水力、風力、太陽光等は再生可能エネルギーと呼ばれています。

それに対し二次エネルギーは一次エネルギーを転換・加工することで得られるエネルギーのことを指します。例えば水を太陽光や風力から得た電気で分解して作られたりする水素等がそれにあたります。日本は一次エネルギーの自給率がとても低く、一次エネルギーが供給されなければ水素を作り出すことができないので水素エネルギーとして活用することができません。

再生可能エネルギーや新エネルギーの普及が加速

政府が掲げた2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けて2000年代に入り、再生可能エネルギーや水素エネルギーの技術開発が進んでいます。太陽光発電やバイオマス発電等、主要な電源の一つになりつつあります。これらの再生可能エネルギーの普及の一助となったのは2012年に創設された「固定価格買取制度(FIT制度)」です。FIT制度は石油等と比べて発電コストが高い再生可能エネルギーを補うために電力会社に再生可能エネルギーでできた電気を固定価格で買い取るように義務付けた制度です。ただし買取にかかる費用は国民から徴収されています。

(出典)JPEA出荷統計、NEDOの風力発電設備実績統計、包蔵水力調査、地熱発電の現状と動向、PRS制度・固定価格買取制度認定実績等より資源エネルギー庁作成
(出典)JPEA出荷統計、NEDOの風力発電設備実績統計、包蔵水力調査、地熱発電の現状と動向、PRS制度・固定価格買取制度認定実績等より資源エネルギー庁作成

FIT制度がスタートして以来、太陽光や風力、バイオマス発電等の再生可能エネルギーの伸び率は年平均26%にもなります。さらに2016年以降も以下のグラフのように伸び続け、2022年の日本国内の全発電電力量(自家消費を含む)の電源別割合は22.7%にもなっています。

出典:特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所
出典:特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所(日本の全発電電力量に占める自然エネルギーの割合の推移)

ただし、電気料金によって徴収されている国民の負担は2016年には年間約2.3兆円にもなり、太陽光や風力発電の発電コストは主要国と比較し高い水準にあることから、国民の負担を軽減するためにも再生可能エネルギーの発電コストを下げるための一層の技術開発などの努力が求められています。

 

三菱重工グループでは新エネルギーとして期待される水素発電分野で、三菱重工パワーインダストリーが産業用ボイラー向け水素焚きガスバーナーの開発 、三菱重工が水素焚きガスタービンの開発などで世界トップレベルの技術力を誇ります。

出典:経済産業省資源エネルギー庁(水素基本戦略にもとづく最近の主な取り組み)

2017年に策定された「水素基本戦略」では水素を供給する側の国際的なサプライチェーン構築や、利用する側のFCV(※1)・FCバス(※2)や水素ステーションの普及、水素発電の商用化などの取り組みが掲げられています。

※1 FCV … 燃料電池を使った自動車。燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle)
※2 FCバス … 燃料電池を搭載し、自ら発電しながら走行するバス。FCバス(Fuel Cell バス)

水素と再生可能エネルギーは相性が良い

水素は様々なエネルギー源から製造できる二次エネルギーです。利用方法も発電や熱利用など多岐に渡ります。再生可能エネルギーから製造する際には二酸化炭素を排出せずに製造することができ、貯蔵や輸送も可能です。これらのことから環境面においてもエネルギーの安定供給においても重要なエネルギーといえます。

水素エネルギーが注目される理由

様々な物質から取り出せる

水素は電気を使って水から取り出すことができますが、水以外にも天然ガスや石炭等の化石燃料から取り出すこともできます。再生可能エネルギー由来の電気を使って取り出すのはグリーン水素、化石燃料から取り出す際に発生する二酸化炭素を大気中に排出したままの水素をグレー水素、二酸化炭素を大気中に排出せずに回収・貯留・利用したものをブルー水素といいます。

水素(H)は様々な物質から取り出すことができ、二酸化炭素(CO₂)を排出せずに取り出せば、それを燃焼(酸素(O)と結合)させて発電したり、熱エネルギーとして利用したりした際に排出されるのは水(H₂O)なので、一切二酸化炭素を排出しません。

エネルギー自給率を高める

さらにエネルギー自給率を高めるという点も重要なポイントです。日本はエネルギー自給率が低く、安定してエネルギーを供給するのが難しい側面がありますが、様々な資源からつくることができるということは多くのエネルギー資源の利用が可能になるということです。日本は一次エネルギーを90%以上海外からの輸入に頼っています。特定地域への依存度が高いので国際情勢に影響を受けやすいという問題もあります。未利用のエネルギーや再生可能エネルギー等から水素をつくり利用することができればエネルギーコストを抑えながら、エネルギーとエネルギーの調達先を多角化できます。日本国内の資源を水素の原料にできればエネルギー自給率が向上し「エネルギー安全保障」の課題が解決されます。

日本の産業競争力を高める

水素エネルギーの市場は国内では2030年に1兆円程度、2050年に8兆円程度といわれています。さらに日経BPクリーンテック研究所によると世界の水素インフラの市場規模は2030年には40 兆円弱、2040 年には80 兆円、2050 年には160 兆円になると予測しています。

世界水素インフラ市場規模予測

出典:日経BP クリーンテック研究所「世界水素インフラプロジェクト総覧よりNEDO 作成

日本は水素エネルギーに関連する高い技術を持っています。水素を燃焼させて利用する技術力に加え、「燃料電池」分野における特許出願件数は日本が世界一です。つまり、水素社会の実現を促進するということは日本の優位性を高め、国際的な競争力を高めることに繋がるのです。

水素社会へ向けて三菱重工パワーインダストリーができること

三菱重工パワーインダストリーはカーボンニュートラル社会の実現に向けて、水素発電に関する技術開発を促進しています。産業用ボイラー向け水素焚きガスバーナー開発においては水素の廉価普及を待たずとも水素発電に備えられるように現在のガス焚きバーナーとして利用しても高性能を発揮する水素焚きバーナーを開発しました。天然ガス等との混焼を含め、水素利用が0~100%という条件で水素を利活用したボイラーを低コストかつ効率的に実現します。きたる水素社会へ向けて、ぜひ今から準備していただければと思います。お気軽にお問合せください。

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